造形とボディーカラーでマツダだと分からせるための工夫:車両デザイン(1/3 ページ)
2012年2月にマツダがSUV「CX-5」を発売して4年余り。コンパクトカーの「デミオ」や、「アテンザ」「アクセラ」「CX-3」「ロードスター」、北米向けの「CX-9」や中国向けの「CX-4」に至るまで「魂動デザイン」の展開が進み、統一感を持ったデザインの新世代商品群がそろった。同社デザイン本部の玉谷聡氏に、マツダを象徴する造形とボディーカラーについて聞いた。
2012年2月にマツダがSUV「CX-5」を発売して4年余り。コンパクトカーの「デミオ」や、「アテンザ」「アクセラ」「CX-3」「ロードスター」、北米向けの「CX-9」や中国向けの「CX-4」に至るまで「魂動デザイン」の展開が進み、統一感を持ったデザインの新世代商品群がそろった。
アテンザやCX-5、2016年7月にマイナーチェンジしたアクセラを担当し、2016年8月28日まで開催するイベント「Be a driver, Experience at Roppongi」の開発者トークショーで登壇するマツダ デザイン本部の玉谷聡氏に、マツダを象徴する造形とボディーカラーについて聞いた。
動くモノの美しさを骨格から表現する
玉谷氏は、魂動デザインにはクルマは美しい道具でありたいという願いが込められていると説明する。動くモノの美しさの手本としたのは動物のチーターだ。「単純に形をまねるだけでなく、動いている時にどのような様子なのかを分析してクルマに応用しよう、とデザインがスタートした」(同氏)。
その成果をまとめたのが2010年に発表したコンセプトカー「マツダ 靭(SHINARI)」だという。「躍動感や肉感、前に向かって直線的に跳躍しようとする生命感を表現した」(同氏)。
「われわれはクルマを作る時、見る時に解剖的な視点で考える。どんな骨格を持っているのか、その骨格にはどんな意図があるのか。その上にどのようにリズム感を持たせているか。さらにどんな光の質が与えられているかでデザインが決まる。骨格から全てがスタートする。骨格がなければその上のリズム感も光の質も乗せられない」と玉谷氏はデザインに取り組む目線を紹介した。
靭(SHINARI)に始まった魂動デザインの骨格のポイントは、「いかに地面に踏ん張っているように見えるか」(同氏)だという。タイヤに向かっていく造形が、すばしっこさの表現の基となっている。
その骨格の上に「リズムを持った造形を与える。クルマ全体の力感のため方、跳躍感を、新世代商品群に共通で持たせている。靭(SHINARI)は3本のラインでクルマの流れや踏ん張り感を表した。モデルによってリズム感は変えている」(同氏)。
デザインの仕上げは光の質だと玉谷氏は説明する。「ここがデザイナーとクレイモデラーが時間をかけて取り組んだところだ。光の質感をデジタルで作るのは簡単だが、まずは人の手で作らなければならない。この時にエッセンスとなるのは、スケッチで描いた彫刻感や踏ん張り感だ。デザイナーはまず、タイヤや居住空間を無視して造形のエッセンスを抽出する。モデラーはスケッチに基づいてそのエッセンスを3次元に起こしていく。そこから、タイヤを装着する量産の状態まで作り込む」(同氏)。
最初にエッセンスを取り出すことで、量産の制約を乗り越えて必要な要素が残せるのだという。玉谷氏は「美しい道具は感性や生活を高めてくれる。美しいものを所有する喜びを提供したい。そのためには、魂を動かす、ハッとさせるものを作っていかなければならない」と“魂動”の由来を解説した。
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