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“町の工務店”成長の秘訣は新卒採用の継続にありイノベーションで戦う中小製造業の舞台裏(8)(3/5 ページ)

自社のコア技術やアイデアを活用したイノベーションで、事業刷新や新商品開発などの新たな活路を切り開いた中小製造業を紹介する本連載。今回は、高度成長期に創業した典型的な“町の工務店”を継いだ2代目社長の奮闘を紹介する。売り上げアップの秘訣は、新卒社員採用の継続にあった。

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オリジナル商品「創造する空間〜クリエイティブワークスペース」

 新しい仕事をとろうとPCで「へたくそなチラシ」(丈彦氏)を自作し、あちらこちらにポスティングして回ったこともあるそうだ。

 「何の反応も得られませんでした」と吉田社長はいう。

 それでも「できることは何でもやろう!」とWebサイトを作り、中小企業家同友会に入って異業種交流会にも参加し勉強を始めた。いろいろな業種の経営者と知り合う中で得たことは大きかった。

 同友会に入って3〜4年したころ、会員企業からオフィスの改装工事の依頼があった。「社内に広いカフェ空間と、社員がゆっくり休める和室を作ってほしい」(丈彦氏)というオーダーだった。

 最初は、「社内にそんなスペースが必要なのか?」と疑問に思った吉田社長だが、打ち合わせを重ねる中で、「社員には、休憩時間にPC机で昼食をとるのではなく、ゆったりできるスペースで過ごしリフレッシュしてもらいたい。そうすれば仕事の効率も上がるだろう」というコンセプトに共感した。

 オフィスの中にカフェ空間を設けると、会話やディスカッションの機会が増える。社外からも人が集まり、新しいアイデアや仕事が生まれる。実際に完成したオフィスの活用方法と効果を見た丈彦氏は、自社を「創造する空間〜クリエイティブワークスペース」のモデルルームにすることを決意した。

 「実は、前年度に赤字を出し、これからどうなるのか分からない……」(丈彦氏)と追い詰められている時期だったそうだ。同氏は「会社を経営してきた中で、一番、苦しい時だった」と当時を振り返る。

 そんなときに、自社の家屋をリニューアルしても1円にもならない。けれど、次の受注につなげるためには、いいものを作らなければならない。焦りと不安にとりつかれ、余裕をなくし、棟梁たちにも厳しい要求をしてしまったそうだ。

創造性豊かに過ごす感性を高めるに、自然に素材とエコに配慮した工法を提案
創造性豊かに過ごす感性を高めるに、自然に素材とエコに配慮した工法を提案

 棟梁たちの頑張りで完成した新社屋は、経営者仲間から「いいね!」と言われ、幾つかの受注につながった。厳しい状況ではあるものの、「やってよかった! これが看板商品となり苦境を抜け出せる……」というほど、ビジネスは甘くなかった。

 「あのときの受注は、ご祝儀的な意味があったと思います」と丈彦氏は経営者仲間に感謝している。しかし、いつまでも好意に甘えるわけにもいかない。経営を立て直すために、マネジメントやプレゼンの方法、営業のやり方などの勉強をコツコツと継続した。

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