自動運転実用化時期を前倒した日本、米国とドイツを捕捉できるのか:Autonomous Vehicle and ADAS Japan 2016レポート(3/4 ページ)
「Autonomous Vehicle and ADAS Japan 2016」には自動車メーカーやティア1サプライヤ、地図メーカーが登壇し、参加者の質問にも答えながら講演やパネルディスカッションを行った。2日間にわたるカンファレンスのレポートをお送りする。
サプライチェーン全体を意識した電子制御システムの構築
同カンファレンスの2日目の午前中は「自動運転に向けた車載アーキテクチャーの安全性強化」と題した基調セッションが行われた。そのセッションに含まれるマツダの講演は、同社の企業理念を交えた興味深い内容だった。
マツダは「技術進化の目的=人間が行動してきたことを、行動しなくてもよくなった」と定義し、これからの自動車産業の技術進化では、クルマ、人、インフラが協調する社会が必要だと話した。
その中で、自動運転や運転支援システムでは、ロバスト性が高いドライバーの状態推定技術をより安く、より多くのクルマに搭載することが求められるとした。特に、リアルワールドでの気象や体調把握といったセンシングは、究極の安全安心につながる理想のインタフェースになると説明した。
こうしたシステムを構築する上で、課題となるのが情報セキュリティだ。クルマの情報セキュリティ強化は、品質、環境、安全に続く次世代の企業コンプライアンスと認識するべきだと強調。開発から生産、物流、サービス、廃棄に至るまで、サプライチェーンの全てを意識して電子制御システムを構築する必要があると訴えた。
具体的なシステム構築としては、多層防御や物理的なゲートウェイ配置によってECUなどへの直接攻撃を防ぐとした。また、MAC(Message Authentication Code)導入の必要性も示唆した。だが、マツダ 統合制御システム開発本部 副本部長の山崎雅史氏は「セキュリティはハッキングとの追いかけっこ」であるとし、課題解決の難しさを認識していると語った。そして、車載アーキテクチャについては、「CANの使い勝手は良いので、当面はCAN中心での開発を進める」と明言した。
集権型に進化するECU
一方、ボッシュは車載アーキテクチャに対して積極的な「進化」を提唱した。提示したロードマップでは、現行のCANによる分割配置ECU体制から、中期的にはCross Domain Centralized (ドメイン集権化)に移行させ、インフォテイメント系と「走る/曲がる/止まる」の領域であるカーセントリック系との融合を目指す。
その実装段階では、現行のマイコンに加えてGPUの利活用を検討する。また、ゲートウェイを先進化させ、統合的なプラットフォームを構築する。そして長期的には、「VCU」と呼ぶECU機能を一元化したシステムに集約し、車載機能の多くをクラウドに徐々に移行していきたいと説明した。
このVCUに関して会場内から「一元化されることで、セキュリティ面で脆弱性が高まるのではないか」との質問が出た。これに対してボッシュ側は「ハッキングに対しては、一元化することで課題を早く洗い出すことができる。それは当然、高度なゲートウェイ化や暗号化によってVCUを保護した上で行う」と説明した。
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