次の20年へ、電動アシスト自転車が迎える「第二の夜明け」:小寺信良が見た革新製品の舞台裏(5)(6/7 ページ)
1993年に世界初の電動アシスト自転車「PAS」を発売したヤマハ発動機。この電動アシスト自転車という革新製品はいかにして生まれ、約20年が経過したこれからどのような進化を遂げようとしているのか。小寺信良氏が探る。
「YPJ-R」は“スポーツバイクへの誘い”
―― ただですね、僕もロードバイクに乗るんですが、あれって自力で頑張るってのがそもそもの目的じゃないですか。そこにアシストを入れるというのが、市場のニーズに合うのかなと。実際に発売されて、従来のロードバイクファンの方からの反応はいかがですか?
鹿嶋 反応は、ひとえに批判ですね(一同笑)。
モーター、バッテリーがあることもそうですし、ロードバイクという存在に対して冒涜(ぼうとく)だと。モーターもバッテリーも言い換えると重さなんですよね。軽量化して効率化したいのに、非効率化してどうするんだと。
確かに自分の体を鍛えるというマインドの方には合わないと思うんですよね。この商品のターゲットは、そこではないと。
―― それはカタログのイメージからも分かります。この手のバイク、普通はラフなジャケットでは乗らないですよね。
鹿嶋 これはスポーツバイクへの誘いなんですよ。うちとしてはママチャリの対極にあるロードバイクからスタートすることによって、趣味材とかスポーツバイクの領域に手を上げて入っていきますというメッセージを込めている部分もあります。
じゃあターゲットは誰かというと、気軽にスポーツバイクを始めたい層というのがいらっしゃるんですね。そういう方に最初の一歩として視野に入れて頂ければということで、それなりに良い仕様にしました。
―― ロードバイクに詳しくない方だと、自転車に税込み24万8400円というのは高いと思われるかもしれませんが、あの世界ではよくある価格なんですよね。高級車になれば100万円オーバーも珍しくないですから。
鹿嶋 実はスポーツバイクを買って「やるぞ」と自己投資したけど、すぐ挫折する人が結構多いんです。最初からこういうのがあったら、ちゃんと続けられたんじゃないかという調査結果もありました。それは体力補完と捉えるのではなく、最初の一歩としてちょうど良いと言うこと。
ロードの世界では、1人でストイックに走るよりも、パートナー、仲間と走るというシーンが非常に増えてきています。でも男性からすると、女性が付いて来てるかチラチラ見ながら走ることによるストレスだったり、逆に女性からすると自分がみんなの足を引っぱってるという申し訳ない気持ちがある。でもこれだったら一緒に走れるよねと。これは仮説だったんですけど、売れ行きを見ていると次第に確信に変わりつつあります。
―― なるほど。ある程度女性層も狙える製品でもあると。
鹿嶋 もう1つは、われわれ「リターンサイクリスト」って勝手に呼んでるんですが、昔は自転車に凝って散々乗り回してたんだけど、子どもが生まれて10年20年ごぶさたしている層。もう1回乗ってみたいと思ったときに、今からバリバリのやつに乗るのは難しくて、でもこういうのがあるんだったらもう1回乗ってみたいというご意見は、東京モーターショーの会場ではすごく多かったんです。
その時に熱く語られていた方の意見としては、ある程度いいものじゃないとがっかりして手が出ないんで、いいもの出してくれと。なので第1弾は、しっかり作り込んでいこうということになりました。
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