中小企業が気を付けるべき「秘密情報の目的外使用禁止義務」とは?:いまさら聞けないNDAの結び方(7)(4/5 ページ)
オープンイノベーションやコラボレーションなどが広がる中、中小製造業でも必要になる機会が多いNDAについて解説する本連載。今回が最終回となります。今回も前回に続き、中堅・中小企業がNDAを結ぶに当たり留意すべき点を説明します。
さらにもう一つ江戸氏がチェックすべき重要な点
本連載の第4回目「大手との協業、NDAを結ぶ前に『目的の明確化』が必要な理由」で、NDAを結ぶ目的が適切な範囲に設定されているか否かの検討が重要であるということを説明しました。
詳細は第4回で説明しましたので、そちらをご参照いただければと思います。ポイントは、コラボレーションできるか否か不透明な状態で、NDAを結ぶ目的が必要以上に広く規定されていると、秘密情報を開示する者にリスクがあるということです。つまり、コラボレーションできるか否かが不透明な状態では、できる限り“狭く”設定した方が安全だということがいえると思います。
具体的には、江戸氏が受け取ったNDAの契約書のひな型に、NDAを結ぶ目的が「次世代電気自動車用小型モーターの開発の検討」と記載されている場合は、契約書上はCFGモーターズは、大江戸モーターから開示された新型小型モーターの技術データ(秘密情報)を、次世代電気自動車用小型モーターの開発のための“いかなる検討目的”でも用いることができるという解釈が可能になります。この解釈をもとに、CFGモーターズは、開示を受けた技術データを自社のモーター開発のためにも流用できるということになります。そうなると、大江戸モーターにとっては大きなリスクとなり得ます。
この契約書だと、次世代電気自動車用小型モーターの開発であれば、制限を受けず使えるので“いろいろ”検討できるな……。
「そんなあくどいことって現実に起こるのか?」といぶかっている読者の方もいらっしゃるかもしれません。ところが、現実には結構あるのです。筆者だけの経験を見ても、日本企業同士のNDAのひな型においても、NDAを結ぶ目的が広く記載された例を時折見かけます。
他方、江戸氏が受け取ったNDAの契約書のひな型に、NDAを結ぶ目的が「次世代電気自動車用小型モーターの開発を共同で実施することが実現可能か否かの検討」と記載されている場合は、CFGモーターズは、大江戸モーターから開示を受けた上記小型モーターの技術データ(秘密情報)を、大江戸モーターとコラボ(共同開発)するか否かの検討のためだけにしか使用できなくなります。従って、コラボできるか否かが不透明な段階では、目的はこのような表現とする(狭く記載する)方が好ましいということになります。
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