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人と戦うために生まれたロボット「電王手さん」は“人へのやさしさ”でできている産業用ロボット(2/4 ページ)

人工知能やロボット技術の進化で、「人間 対 機械」のさまざまな対決に関心が集まっているが、2011年からプロ棋士とコンピュータが将棋の対局を行ってきたのが「電王戦」である。「電王戦」では2014年から指し手としてデンソーウェーブの産業用ロボットを採用している。この「人間 対 機械」の最前線に立つ「指し手ロボ」の開発担当者は、産業用ロボットの未来に何を見たのか。

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「新電王手さん」は対局を邪魔しない静かさと速さ


最新の代指しロボット「新電王手さん」(クリックで拡大) 出典:デンソーウェーブ

MONOist 3代目の「新電王手さん」はどのような進化があるのでしょうか。

澤田氏 「電王手さん」からの改善点は、「成り」のさらなる高速化と、消音性の2点である。前作ではハンド部分の変更によって「成り」の動作をより人間に近いものに変えた。しかし、その所要時間は17秒程度と、人の手よりもまだまだ遅かった。実際にプロ棋士との対決が「成り」の動作により間延びするような場面もあり、対局の緊迫感を保持するためにここを改善する必要があると感じていた。また、駒を置く際にカチカチという音が鳴っていたため、人間同士が対局する際の静粛な雰囲気を再現するに至らなかったという課題も見えていた。

 この音の理由は、ハンドの機構的な制約。「電王手さん」では、ハンド部分に動作の選択肢が「開く」と「閉じる」の2つしかない汎用品を使っていた。だが、将棋の駒は「アームを開く」という動作を行っても駒がすぐには落下せず、配置にズレが生じる場合があった。この問題を解決するために、前作ではハンドの開閉を細かく繰り返す「チャタリング」という動作を行い、じわじわと駒を離すことで正しい配置を実現していた。これが駒を置く際のカチカチ音となっていたのだ。

 今回は、電動ハンドと、その動作をつかさどるプログラムを自社で内製した。そのため、一度の動作で緩やかにハンドの開閉ができ、正確かつ静かに駒を指せるようになった。また「成り」の動作についても、ハンドで駒をはさみあげた後に、同じハンド上で成りの動作用の“指”ではさんで回転し、再度最初の“指”ではさみ直して指すという方法に変更した。これらにより、「成り」の高速化を実現し、所要時間は半分以下となる7秒にまで短縮することができた。

自社開発したハンド部分/高速化に成功した「成り」機構 (クリックで拡大) 出典:デンソーウェーブ

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