“8年ぶり”最終黒字のソニー、アップルショックと熊本地震でエレキ4分野に暗雲:製造マネジメントニュース(2/3 ページ)
ソニーは2015年度決算を発表。売上高は微減したものの利益は大幅に改善。実質的な最終利益が黒字となるのは2007年度以来8年ぶりと好調だった。しかし「iPhone」の出荷数大幅減による「アップルショック」により、業績のけん引役だったイメージセンサーが軟調に。熊本地震の影響で他のエレクトロニクス分野の業績も悪化は避けられそうにない。
デバイス分野は想定が全て裏目に
ゲーム&ネットワークサービス分野と対照的なのが、2015年度の半ばまで大きな収益を稼ぎだしてきたデバイス分野だ。2015年度の売上高は前年度比0.9%増となったものの、営業利益は同1176億円悪化の286億円の赤字に転落した。
1176億円の内訳としては、596億円の減損を計上したカメラモジュール事業、同じく306億円の減損を計上した電池事業が数字としては大きく見える。カメラモジュール事業は、「組み立ての自動化を進めることで歩留まりと利益率を高めていけると考えていたが、実際には仕様の変更と需要の変動への対応力に欠けた事業構造になった側面がある」(吉田)として、当初想定と市場環境の要求にずれがあったことを認めた。さらに、2013年度後半に立ち上げた新規事業にもかかわらず製造の立ち上がりが予定から大幅に遅れてしまい、今回の減損計上という結果につながってしまった。今後は「あるべき事業規模を再検討する」(同氏)としている。
電池事業は2013年度の321億円に続く同規模の減損計上になる。今回は「スマートフォン向けバッテリーで、競合他社と比べて基本性能が低かった」(同氏)ことを理由に挙げている。2度目の減損とはなったが、今後は引き続き性能の改善に努め、より強みを持つ高出力の液系バッテリーへのシフトを進めるという。
これら2事業以上に深刻なのがイメージセンサーだろう。吉田氏は、これまで業績のけん引役だったイメージセンサーが一転、足を引っ張る側に回った理由について「結果的に顧客からの需要数量を読み違えた」と説明する。これはApple(アップル)の「iPhone」の需要が想定を大幅に下回ったことを指している。いわゆる「アップルショック」だ。実際にアップルの2016年1〜3月期の決算結果では、iPhoneの出荷数が前年同期比で18%も減少している。
需要の読み違えをカバーするため、中国のスマートフォンメーカーなどに拡販を行っている。この受注は順調だが、本格的な回復は2016年度下期になる見込みだという。2016年1〜3月期は、需要の大幅な減少に加えて、生産能力の増強を続けてきた工場の稼働停止によるコスト増、為替も円高方向に振れたため、これまでイメージセンサーで確保してきた利益幅をほぼ全て吐き出すほどの減益となった。
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