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ゴム業界の常識への挑戦が生んだ、水素ステーション普及の“立役者”イノベーションで戦う中小製造業の舞台裏(7)(2/5 ページ)

自社のコア技術やアイデアを活用したイノベーションで、事業刷新や新商品開発などの新たな活路を切り開いた中小製造業を紹介する本連載。今回は水素ステーションに採用された「耐水素用ゴム材料」を開発した高石工業を紹介する。

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「陰の立役者」として技術の進化を支えるゴムパッキン

 高石工業が扱うのは、工業用精密ゴムパッキンだ。かつては、油圧用パッキンを主力商品としていた。時代の流れに応じて、ガス用パッキン、水回りのパッキンと取引先の業種を広げてきた。


ゴムの種類について解説をしてくれた古家育真さん

 あらゆる製品に必要とされるゴムパッキンは、新技術が生まれるたびに、新たな形状や機能が要求される。シンプルなOリングだけを製造していては、遅かれ早かれ価格競争に巻き込まれるのは容易に想像できたため、同社は取引先の要求に応え、常にチャレンジを続けてきたという。

 その一例が、ゴムと金属の焼付け品だ。金属パーツの表面にゴムを接着してから納品するためクライアントがパッキンを装着する手間を省けるのはもちろん、ゴムに金属の強さが加わるため耐久性も向上する。

 そもそも、油圧用パッキン、ガス用パッキン、水回りのパッキンでは、クライアントから求められるゴムの性能は少しずつ違う。だから、原料ゴムにカーボンや薬品を配合し、ゴムの性能を変えている。

 例えば、水回りには長時間、水に浸かっても体積変化が少ない低吸水性の材質が必要だ。「何に使うのか」「どこにどのように使われるのか」に応じてゴムを選択し、パッキンを製造する。場合によっては新材料を開発することもある。


一見、どれも黒いゴムだが、用途に応じて性能が違う

 今、同社が主力としているのは、水回りのゴムパッキンだという。「生活様式の変化によって、水回りのゴムパッキンの需要が増大したからです」と高石氏はいう。

 昔、トイレがくみ取り式だった時代には、水回りにゴムパッキンの出番は少なかった。しかし、水洗トイレになり、一般家庭にも温水洗浄便座が普及した。新技術の陰に、ゴムパッキンの活躍がある。水栓や温水洗浄便座の可動部はもちろん、センサーなどの電子部品に水が侵入しないように防滴用のパッキンも必要だ。

 水回りの電化が進んだのは、トイレだけではない。キッチンやバスルームも同様だ。

 電化が進んだり、新しい技術が生まれるたびに、ゴムパッキンにも新機能が求められるようになる。それぞれが特殊な用途であるため、取引先の要求はどんどんニッチになる。高石工業は、クライアントが要望する隙間を次々と埋めていった。

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