遺伝子データも扱えるようになったオープンソースフレームワーク:医療機器ニュース
Appleは、オープンソースフレームワーク「ResearchKit」の新モジュールを発表した。産後うつやぜんそく、心血管疾患などの研究に役立てられているResearchKitに、遺伝子データも組み込めるようになる。
Appleは2016年3月22日、オープンソースフレームワーク「ResearchKit」をさらに進化させた新モジュールを発表した。
ResearchKitは、通常は検査室で行われる各種の医療検査を、iPhoneアプリケーションで扱えるようにしたもの。オープンソースとして提供されており、誰でもすぐにiPhone用の調査研究を設計できる。医学研究者はiPhone用アプリケーションを使うことで、参加者が世界中のどこにいても、より頻繁に正確なデータを収集でき、また、疾病や病態について、対象を絞り込んだ研究を計画したり、より条件を絞り込んで被験者から特定のタイプのデータを収集したりすることができるようになる。
一方、研究の参加者は、どの研究に参加するか、どの情報を提供するかに関する承諾プロセスをインタラクティブに確認したり、参加している研究のタスクを簡単に実施したり、アンケートの回答を送信したりできる。既にResearchKitによる研究はかつてない規模に広がり、これまで不可能だった実態の解明や発見を得られるようになっているという。
今回は新たに、遺伝子解析サービスを提供する企業、23andMeが設計したモジュールがリリースされた。このモジュールによって、被験者は遺伝子データを医学研究に簡単に提供できる。研究者は、National Institutes of Mental Healthと連携して、何回かの調査結果に基づき、遺伝子研究のための唾液を使う検査キットを被験者に提供する。
これにより研究者が、円滑でシンプルかつ費用のかからない方法で、遺伝子データも研究に組み込めるようになる。また、利用可能なソフトウェアコードを作成し、タスクをコミュニティーに還元することで、他の研究者がこのフレームワークを使って、さらに多くの研究ができるようにすることも可能だ。
遺伝子データを利用したResearchKitの研究には、産後うつ研究の「PPD Act」、心血管疾患を研究するための「MyHeart Counts」、ぜんそく研究向けに開発された「Asthma Health」がある。
ResearchKitを使うことで、iPhone経由でこれまでより広い範囲の対象者と大量のデータを調査できるようになり、環境や地理、遺伝子といった要素が、個人の疾病や治療に対する反応にどのように影響を与えるかを把握できるとしている。
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