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日本発の車載LAN規格「CXPI」は「CANとLINのイイとこどり」車載LAN規格 CXPI インタビュー(3/3 ページ)

日本国内で開発/策定された車載LAN規格「CXPI(Clock Extension Peripheral Interface)」が、自動車技術会のもとで2019年のISO化に向けて動き出している。CXPIは、CANやLINの適用が難しかった部位の多重通信化を狙う。機器間を1対1でつないでいたワイヤーハーネスをCXPIで多重化できれば、車両の軽量化にもつながる。CXPIの開発の背景や、導入のメリットなどについて話を聞いた。

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欧米にも採用してもらうには

MONOist LINを策定した欧州はCXPIのような拡張を検討しているのではないか。

金子氏 欧州の自動車関連企業は、規格を策定した手前もあってLINを使っている。応答性を高める手法を活用しながらLINを多用しているようだ。しかし、LINの応答性を高める手法は各ノードに発振器が必要になるなどコストが高くなる。その一方でジカ線で対応すると重量が増えるというジレンマがある。そのせいもあってLINの適用が進まなかった部位がある。2000年代前半からLINがあるにも関わらず採用が進まないのは、使いづらいからだろう。LINを策定するLINコンソーシアムなども課題認識はわれわれと同じではないか。

MONOist デンソー社内の担当部署で開発に着手してから、JASO規格として完成させるまでどのようなスケジュールで進んだか。

金子氏 社内で開発に着手したのは2010年末で、自技会に提案したのは2012年だ。2015年3月にJASO規格向けにプロトコルやテストの仕様、ユースケースを策定し、2016年3月に診断系の仕様書2件を審議してJASO規格として完成する。日本発で、基礎部分から車載LAN規格を策定し、規格文書の発行まで持って行くのは初めてのことになる。

 最初の段階で自分の部署だけで作っても誰も使ってくれないと思ったので、CXPIが関わるボディ関係の事業部とも課題を共有し、仲間をつくって社内で動き出した。自技会に提案する前には国内自動車メーカーにCXPIを評価してもらい、課題認識やアドバイスを聞いた。サプライヤだけで作るとどうしても使いにくいものになってしまうからだ。

 自技会では、車両通信部会傘下の多重通信ダイアグ分科会に自動車メーカーや半導体メーカー、ティア1サプライヤ、ツールベンダーなど20社が参加してCXPIについて議論した。メンバーを増やしながら規格化に取り組んできたかいがあり、採用についても「良い通信手段を作ってくれた」と前向きに検討していただいている感触がある。

 車載LANのICは外資系半導体メーカーの得意分野だが、国内に開発拠点を持つ半導体メーカーに大いに協力していただき、複数社からCXPIに準拠するトランシーバICが市場に出ている。ソフトウェア開発ツールも国内ベンダーに用意してもらった。CXPIを用いた車載システムの開発に必要なものはそろっている。

MONOist 日本発の規格だが、日本だけでなくグローバルで採用されなければ普及したとはいえない。海外市場での普及に向けた施策は。

金子氏 JASO規格は日本の標準規格でしかないので、海外での普及を目指すにはISO化が必要だ。現在、ISO化の提案準備を進めていて、2016年から提案を始める。2019年にISO化を目指している。海外での認知度を上げるには、ISOとSAE(米国自動車技術会)を避けて通れない。

 SAEでは既にCXPIの規格文書を発行済みだ。米国のSAEで仲間作りをしてから欧州のISOに持っていくやり方がスムーズだと考えた。SAEでの文書作成には米国自動車メーカーも参加しており、CXPIの認知も広がったはずだ。

 自動運転の普及拡大がCXPI採用の後押しとなる可能性がある。自動運転にはクルマとドライバーをつなぐインタフェースが必要だ。ドライバーの状態を監視するセンサーも増える。そういった自動運転システムに必要なHMIになるとLINでは対応できない。CANを使う場合もあるだろうが、CXPIの需要は十分に見込める。

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