“使えない”クルマの音声認識が“使える”ようになる日は近い:車載情報機器(3/3 ページ)
音声認識システム開発の大手・Nuance Communications(ニュアンス)がシリコンバレーで最新技術説明会を開催。車載器とクラウドの双方で音声認識処理を連携して行う「ハイブリッド」方式のデモを行った。さらに、人工知能技術の活用により、Appleの「Siri」をはるかに上回るレベルの音声認識技術も開発中だという。
マサチューセッツのNLU開発現場
シリコンバレー取材のフォローアップとして、米国東海岸のマサチューセッツ州ケンブリッジにあるニュアンスのNLU開発拠点を訪問した。ここでは基礎研究と同時に、量産化に向けた具体的な開発を行っている。
ニュアンス NLPリサーチ シニアディレクターのChao Wang氏は、量産化について「(ユーザーとクルマ側が上手く連携した対話である)コラボレーティブ・ダイアログの開発で、クルマ側のガイダンスに柔軟性を持たせなければならない。(正確性を高めるために)複雑な内容になってはいけない。いかに、ロバスト(外部要因に対して普遍的)で、スケーラブル(多様な要素を取り込む)であるかについては、自動車メーカーそれぞれの要求に応えている」と説明する。
現在ニュアンスの音声認識技術は30カ国語以上に対応している。言語によるNLUの難しさについては「サウンドユニットとしては、各言語で違いはあるものの、(意味理解の観点では)類似性が極めて大きい。日本語は、平仮名、かたかな、漢字など文字の種類が多いが、それはNLUの領域では“小さなこと”にすぎない」との考えを示した。
また事業面について、同社ビジネスデベロップメント部門 シニアディレクターのPaul Deastlov氏は「弊社は、車載器で数百のコンテンツプロバイダーと契約している。NLUとAIを活用し、さらに車載器とクラウドを連携するハイブリッド化により、自動車メーカーにトータルサービスを提供できる。また、Google(グーグル)やAppleに比べて、自動車産業との信頼関係を十分に構築できていることも重要だ」とニュアンスの特徴を強調した。
筆者プロフィール
桃田 健史(ももた けんじ)
自動車産業ジャーナリスト。1962年東京生まれ。欧米先進国、新興国など世界各地で取材活動を行う。日経BP社、ダイヤモンド社などで自動車産業、自動車技術についての連載記事、自動車関連媒体で各種連載記事を執筆。またインディカーなどのレース参戦経験を基に日本テレビなどで自動車レース番組の解説も行う。最新刊は「IoTで激変するクルマの未来」。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 車載情報機器のスマホ連携基盤にニュアンス参戦、マツダ提携の米ベンチャーと
音声認識エンジンを手掛けるNuance Communications(ニュアンス)と米国ベンチャーで車載情報機器のソフトウェアプラットフォームを展開するOpenCar(オープンカー)が提携。常時通信接続を行うコネクテッドカーで重要な役割を担う、車載情報機器のスマートフォン連携プラットフォームの事業展開を加速させる。 - カーナビの音声認識使ってる? 運転中の“ながら”SNSに20〜30代が興味
Nuance Communications(以下、ニュアンス)は、日本市場におけるカーナビゲーションシステム(カーナビ)のユーザーを対象にした音声認識機能の利用実態調査を実施。その結果、20〜30歳代のユーザーの使用頻度が高く、特に音声認識機能を使った運転中のSNSメッセージの送信などに興味を持っていることが分かった。 - ウェアラブル/ヘルスケア機器にも拡大、ニュアンスの音声認識/合成技術
ニュアンス コミュニケーションズ(Nuance Communications/以下、ニュアンス)は、音声認識や音声合成の技術をベースに、さまざまな用途向けの音声インタフェースを提供している。車載システムやテレビ用途に加えて、新たにPCや携帯電話機/スマートフォン、ウェアラブル/ヘルスケア機器などにも、その用途を拡大していく。 - 米新車品質調査で車載情報機器の不具合報告が急増、音声認識の浸透が原因
J.D.パワー・アンド・アソシエイツによる2012年の「米国自動車初期品質調査」によれば、車載情報機器に関する不具合指摘件数が急増しているという。不具合指摘の主な要因となっているのが、米国市場で浸透が進む音声認識システムをはじめとするハンズフリー技術である。