WoT(Web of Things)と化すIoTに待ち受ける、分断された未来:SYSTEM DESIGN JOURNAL(3/5 ページ)
さまざまな企業や勢力がIoTを目指していますが、残念ながら勢力ごとの対話はほぼ存在していません。Web技術を共通言語とし、IoTを「WoT(Web of Things)」とすることで妥協点を見いだそうという動きはありますが、成功するかは不透明と言わざるを得ません。
最も小さいモノ
エンドポイントが小さくなるにつれて、問題の性質が変わってきます。Androidが動作し、10Mbpsイーサネット・ポート経由でReSTfulな接続をサポートするAC電源方式の工業用コントローラーを想像することは簡単ですが、ここではやや軽量なデバイスについて考えてみましょう。
Muller氏はARM TechConの基調講演で、現在プロトタイプのインスリン・ペンについて説明しました。まずキャップを取り外し、体に刺して血液サンプルを採取します。ペンはサンプルを分析し、結果をBluetooth経由でスマートフォンアプリに報告します。サンプル採取、分析、送信に必要なエネルギーは全て、キャップを取り外す際に行った作業から賄われ、デバイスはその他の電源を備えていません。
ほんのわずかな電力で動作するCortex-M0サイズの小型MCUは、Webサイトのホストあるいはその他の種類のHTTP終端として有望ではありません。それにもかかわらず、ARMは、ワイヤレスハブを介して小さなエンドポイントをWebベースのIoTに組み込むプラットフォームの構築を進めています。そのプラットフォームの基礎をなすのは小型のmbedカーネルです。
これは、シングルスレッドモニタ、センサーインタフェース、ワイヤレスモデル用ドライバ、データのトランスポートに十分なプロトコルスタックを含むサービスのパッケージです。
一例を挙げると、NXPは低消費電力ワイヤレストランシーバーを統合したMPU-radioファミリーのMCUにmbedを使用しています。NXPの主席プロダクト・アプリケーション・エンジニアであるIanMorris氏は、mbedの役割として小型軽量モニタだけでなく、ハブへのThread接続もあると説明します。Threadは、IoTエンドポイント向けの多企業間プロトコルです。IEEE802.15.4ワイヤレス・メッシュ・ネットワーク上で6LoWPANプロトコルを使用し、IPアドレス指定および高度暗号化規格(AES)に対応しています。
モノをThread経由でスマートハブに接続するか、Bluetooth経由でスマートフォンに接続すると、モノから、インターネットを介してクラウドとのHTTP接続を維持できるデバイスまでの経路が確立されます。ARMは、このヘテロジニアス接続をReSTfulなデータトランザクションをサポートする手段としてだけでなく、フルスケールのエンベデッドOSを小さなモノとクラウドの間でパーティショニングする手段、いわば「Operating System as a Service」として構想しています(図2)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「SoC」or「SoC」?統合へのさまざまな道
1つのダイに複数機能を実装するSoC(System on Chip)化の波は高まるばかりです。アーキテクトはダイ間接続とマルチダイパッケージングの動向に注意を払い、コストや消費電力、将来性までも視野に入れた選択をしなければなりません。 - 組み込みコンピューティングに向けた、ハードウェアアクセラレーションの選択肢
組み込みコンピューティングを加速させるハードウェア・アーキテクチャとは何でしょうか。DSP?GPU?それともメニーコアでしょうか。どのアプローチが最も適するのかを考察します。 - FinFET革命がコンピュータアーキテクチャを変える
FinFETの登場により、ムーアの法則はまだ継続される見通しです。ですが、それで全てが解決するわけではありません。FinFETの登場が、大きなSoCを自律的な機能ブロックに分割するという方向に導く結果となるでしょう。 - サブシステムIPがチップの境界を越える
サブシステム規模のIP(サブシステムIP)はSoCはもちろん、FPGAにまでも影響を与えています。素晴らしい取り組みですが、さまざまな注意点も存在します。スムーズな実装を行うための4つの注意点について述べます。 - 畳み込みニューラルネットワークの使い方、分かりますか?
畳み込みニューラルネットワークとは何でしょうか。学問の世界から現実の世界に登場しつつあるこれは、さまざまな組み込みシステムに利用される可能性が高く、大いに関心を持つべきです。