スケルトニクス 白久レイエス樹氏に聞く、パワードスーツの現在と未来:ロボットキーマンを訪ねて(4/6 ページ)
3mの巨大な身体を手に入れる、そんな夢を現実のものとした「スケルトニクス」。このスケルトニクスで実現したことは何だったのか? そして「エグゾネクス」プロジェクトの終了を発表した今、彼らが次に目指すのはどこなのだろうか。
エグゾネクスが目指したもの
一方、スケルトニクス社設立の大きな理由だった「エグゾネクス」。アクチュエータを用いた力強いパワードスーツを目指したエグゾネクスのプロジェクトは、スケルトニクス1号機を作った翌2012年1月に始まっている。
白久氏 最初にスケルトニクスを作ったのが5年前。エグゾネクスを作ろうと言い出したのが4年前になります。これまで活動してきた中で、僕らの中では中心となってきたロボットです。
実は技術者としては、1号機で技術的興味というのはほとんど満たされてしまっているのです。2号機以降は仕事に近い形で作っているので、感覚は違います。会社にしたタイミングでは、既に技術的興味はエグゾネクスにかなり偏っていました。
ただ、エグゾネクスの開発には大きな問題が2つあった。1つは前述した資金面の問題で、数千万円の資金が必要となる。これは、ライブパフォーマンス分野の売り上げ、スケルトニクスシリーズで資金を集めることで達成している。2つ目は技術的にどうアプローチしていくかだ。
白久氏 エグゾネクスは大きさが3.01mくらいですが、重さは560kg。スケルトニクスは大きさこそほぼ同じですが、重さは40kgほどです。最近注目されている、各社が作っているパワードスーツ(装着型ロボット)は5〜6kgくらいの製品が多いと思いますが、エグゾネクスはその100倍くらい重い、大型のパワードスーツになります。それを技術的にどう作っていくのかというところが2つ目の課題でした。大きな人型ロボットなので、そもそも2足歩行が難しいのです。人が中に入るにせよ、そこをどうクリアしていくか……。
3年間ほどの基礎研究開発を経て、開発が本格化した2015年初頭にエグゾネクスプロジェクトの開発期限を2015年内と定め、いままで集めた資金を投入し、自分たちが掲げた仕様を満たすまで、それに向けて何度も作り直しをしていった。上半身を2回、下半身を3回以上作り直した。しかし、最終的に目指す仕様までたどりつけなかった。その目指した仕様やいきさつは、スケルトニクスのサイトに公開されている。
残念ながらエグゾネクスの試作機は公開されていない。3年間の基礎研究の後、イケるとして踏んで全身の製作に進んでいる。目標とする仕様が達成できなかったとはいえ、そこには最新の技術が盛り込まれており、この後のことを考えると、中途半端なところで試作を公開するわけにはいかないということなのだ。
技術的に達成できたことなど、詳細が非常に気になるところだが、「お伝えできるのは、スケルトニクスにはできない、かなり力強い動きができるということ」だという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 自走するプロジェクターは家電か、それともロボットか?――Cerevo岩佐氏に聞く
家電とロボットの境界をどう捉え、新しい製品をどう投入していくか。ロボットの市場を“ホーム”に拡大していく鍵はそのあたりにありそうだ。 - 松村礼央氏に聞く「物語を再生する"装置"」としてのロボット、多脚ロボット研究開発プラットフォームの構想
コミュニケーションロボットの社会実装を考えたとき、一体、何が必要となるのだろうか。人と、人ではない機械とのコミュニケーションの形を探る。 - ヒトとの相乗効果はロボットを新しい次元に引き上げる、MMSE金岡氏に聞く搭乗型巨大ロボットの作り方(後編)
ヒトの動きがロボットの動きになるロボット「MMSEBattroid」を開発したMMSE 金岡氏が次の実現を狙うのが、4メートルクラスの搭乗型ロボットだ。実現に向けた技術的な課題はなく、各分野の協力を得られれば5年以内に実現するだろうという。 - ヒトとの相乗効果はロボットを新しい次元に引き上げる、MMSE金岡氏に聞く搭乗型巨大ロボットの作り方(前編)
テレビ「リアルロボットバトル」やニコニコ超会議に登場した、ロボット「MMSEBattroid」を開発したのが、マンマシンシナジーエフェクタズの金岡克弥氏だ。ヒトの動きがロボットの動きになる――ヒトとロボットの相乗効果の実装を狙う、金岡氏に話を聞いた。 - 実用化進む「装着型ロボット」勝算は、アクティブリンク藤本社長に聞く
多くの装着型ロボットを開発してきたアクティブリンクが2015年、ついにロボットの量産を開始する。ビジネスとしての勝算はあるか、藤本社長に聞いた。