第50回 モジュールとエンベデッドパッシブ:前田真一の最新実装技術あれこれ塾(3/5 ページ)
実装分野の最新技術を分かりやすく紹介する前田真一氏の連載「最新実装技術あれこれ塾」。第50回はモジュールとエンベデッドパッシブについて解説する。
3.バイパスコンデンサ
この電源からICチップまでの間にある配線やビアのL成分による電流供給の遅れは避けられません。
配線は太いほどL成分が小さくなります。また、Lはn個を並列接続すると抵抗と同じで、値は1/nになります(図6)。
このため、電源/グランドをプレーンにするなどできるだけ太く配線しますが、L成分を0にすることはできません。
そこで、同時スイッチングノイズを防ぐためにコンデンサが使われます。
コンデンサは容量だけの電荷を蓄えていて、同時スイッチングノイズで電源電圧が低下すると、溜めていた電荷を放出し、電圧低下を妨げます(図7)。
これがバイパスコンデンサです。
バイパスコンデンサが蓄えている電荷には限界があります。同時スイッチングによる電流の変化が大きければコンデンサの蓄えている電荷では対応できないので、電圧変化への対応は限られたものになります。
このため、多くのコンデンサを並列に接続し、トータルの容量を大きくします(図8)。
多くの基板ではLSIが実装された裏面に大量のバイパスコンデンサが実装されています(図9)。
実際のコンデンサ部品は理想的なC素子ではなく、微小なL成分とR成分が直列に接続されています(図10)。
このため、コンデンサが有効な周波数には限界があります(図11)。
また、通常、基板の電源とグランドは内層のプレーン層なので、バイパスコンデンサを表面実装した場合、ビアを使って内層プレーン層に接続します。このビアもCとLの成分を持っています(図12)。
特に信号配線が内層にある場合、信号配線に使われない表面層までのビアの成分は大きなL成分を持ちます(図13)。
さらに、ICパッケージ内の基板配線も大きなL成分を持っています。この部品の持つL成分、ビアの持つL成分、パッケージ内配線のLのため、基板上のバイパスコンデンサは約100MHz以上の高速な電源ノイズに対してはあまり効果がありません(図14)。
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