第50回 モジュールとエンベデッドパッシブ:前田真一の最新実装技術あれこれ塾(2/5 ページ)
実装分野の最新技術を分かりやすく紹介する前田真一氏の連載「最新実装技術あれこれ塾」。第50回はモジュールとエンベデッドパッシブについて解説する。
2.PDN
では、なぜ負荷の状態変化に対して電源の対応が遅れるのでしょうか?
電源から、ICの電源/グランドまでの電源供給ネットの配線モデルを見てみましょう。この電源供給ネットのモデルをPDN(Power Delivery Network)と呼びます。
電源から基板を介して、BGAなどのボール(ピン)を通して、ICパッケージに電源が供給されます。
基板ではここまでですが、ICパッケージ内部にはまた基板(インタポーザ)があり、BGAのボール(ピン)からICチップ(ダイ)の電源/グランドパッドまでの配線があります。
この後、インタポーザへのチップの実装方式で条件が異なります。
フリップチップ実装であれば、直接ICへ給電されますが、ワイヤボンディング実装の場合は細くて長いボンディングワイヤを介してICへ給電がされます(図4)。
基板やインタポーザの配線、ビアには非常に小さいL成分が存在します。
このL成分は低い周波数に対しては存在が無視できますが、高い周波数成分に対しては高いインピーデンスを持ち、電流の伝搬を阻害します。
配線の途中にL成分があると、負荷抵抗との間で積分回路が形成され、変化の対応が遅れてしまいます(図5)。
このため、ICの負荷が高速に変化した場合、電源からの電流供給がPDNが持つL成分のため、負荷変化の速度に追い付けなくなり、瞬間的に電圧が降下してしまうのです。そういうわけで、ICのスイッチング速度が早くなると、同時スイッチングノイズが大きくなるのです。
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