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皆さん3Dスキャナというものをご存じでしょうか?
3Dデジタイザとも呼ばれる、物体にレーザや縞模様の光を当て、反射光をカメラで読み取ることで物体の3D形状をデータ化する装置のことです。 実物とCADデータを比較・検査するCAT、実物を基にCADデータを作成するリバースエンジニアリングなどで利用されています。低価格化も進んだこともあり、最近非常に注目されています。
この3Dスキャナをお客さまにご紹介すると、必ず聞かれることがあります。それは、「精度はどのくらいなの?」「高精度じゃないと……」といった言葉です。
実物を精度良くスキャニングしたいということからくる言葉だと思うのですが、やみくもに高精度な製品を選定すると、高価であったり、オーバースペックになってしまったりということになります。ここで大事なのが、「精度」とは何? ということを理解することです。
一般的に精度というと、長さの精度(誤差)を思い浮かべるのではないでしょうか? ただ、実は、3Dスキャナの精度には、長さだけではなく、点群のバラつき精度、繰り返し測定の精度などさまざまな精度があります。また、製品のカタログを見ると、「精度」「測定精度」「確度」など各社で表現がバラバラで、それぞれが違う精度のことを表していたりします。
これは、3Dスキャナの性能評価をする標準規格がないために各社で違う基準を使用して、性能評価を行っているためです(2009年9月に「JIS B 7441 非接触座標測定機の受入検査及び定期検査」が制定されていますが、この規格に沿っている機器は、まだまだ少ない状況です。※2011年掲載当時の情報)。
さらに、実は一番重要で、カタログからは、読み取りにくいこととして、データ結合時の精度(誤差)があります。通常、物体をスキャニングするためには、前面や側面、上面などの複数ショットをソフトウェアで結合し、1つの3次元データを作成しますが、カタログには、「1ショット当たりの精度」しか表していない場合が多いのです。この結合時の誤差を小さくするためには、物体形状に合わせた最適なスキャニング方法の確立、ソフトウェア特性の理解といった運用ノウハウが非常に重要になります。
このように、「精度」といってもさまざまな精度があることをご理解いただけましたでしょうか?
本当に重要なことは、やみくもに精度を求めるのではなく、目的達成に必要な精度は何の精度で、どのくらい必要なのか? 精度が高くなくても、運用で回避できないか?ということを検討することだと思います。
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