国産ディーゼル車は本当にクリーンなのか、後処理装置の動作に課題:エコカー技術(1/2 ページ)
国土交通省と環境省は、国内で実施する排出ガス測定試験の手法を見直す検討会の第2回を実施。今回は、トヨタ自動車、日産自動車、マツダ、三菱自動車のディーゼルエンジン車を対象に、実際に公道を走行することで、不正ソフトウェアの有無を確認するとともに、排気ガスが実際に規制基準をクリアしているかなどについて公表した。
国土交通省と環境省は2016年3月3日、「第2回 排出ガス不正事案を受けたディーゼル乗用車等検査方法見直し検討会」を実施した。この検討会は、Volkswagen(VW)が排気ガス規制の測定試験でのみ窒素酸化物(NOx)を基準値以下に下げる不正なソフトウェアを搭載していた問題を受けて、国内で実施する排出ガス測定試験の手法を見直すため立ち上げられた。第1回の検討会は2015年10月に実施し、国内自動車メーカー各社がVWと同様の不正を行っていないことを申告。2回目となる今回は、トヨタ自動車、日産自動車、マツダ、三菱自動車のディーゼルエンジン車6モデルを対象に、実際に公道を走行することで、不正ソフトウェアの有無を確認するとともに、排気ガスの状態を公表した。
国内4社は本当に不正ソフトウェアを使っていないのか
不正ソフトウェアの有無を確認するため、国土交通省と環境省は台上および公道での排気ガス測定試験と、低温時などに尿素SCR(Selective Catalytic Reduction:選択還元触媒)システムやNOx吸蔵還元触媒(LNT)といったNOxの排出を低減する排出ガス低減装置(後処理装置)の動作を抑えてエンジンを守る「保護制御」が作動する条件に関して聞き取り調査を行った。
不正ソフトウェアを使用していないことを評価するポイントは、
- 台上試験と公道試験のNOx測定結果に大きな差がない
- これらの試験結果に大きな乖離がある場合、保護制御の作動が原因であることを説明もしくは数値によって示せる
という2点だった。
排気ガスの測定試験は、対象モデルに車載式排出ガス測定システム(PEMS)を搭載して行った。台上試験はシャーシダイナモ上でJC08モードで走行し、据え置き型の分析計も使用。公道試験は、高速道路/都市部の一般道/都市間を結ぶ国道や県道を走行した。
今回の不正ソフトウェアの有無を確かめる試験で対象となったモデルは、トヨタ自動車の「ランドクルーザー プラド」「ハイエース」、日産自動車「エクストレイル」(ディーゼルモデルは2014年度に生産終了)、三菱自動車「デリカ D:5」、マツダ「CX-5」「デミオ」の6台だった。
国土交通省と環境省は一連の調査の結果、これら6モデルは全て不正ソフトウェアを使用していないと判断した。
不正ソフトウェアの使用の有無を判断する2段階の評価ポイントを先に述べたが、1つ目の「台上試験と公道試験の測定結果に大きな乖離がない」という評価段階で“無実”を証明できたのはデミオとCX-5だけだった。残りの4モデルは台上試験と公道試験の測定結果に2〜5倍、一部で10倍もの格差が見られたが、事前の聞き取り調査で申告された保護制御の作動など明確な要因によるものだった。
台上試験の結果、全てのモデルがNOx排出量の規制値を下回った。エクストレイルとデリカ D:5は規制値を上回ったものの、ドライバーを変更して再測定すると規制値をクリアできた。
台上試験の規制値に対し、デミオとCX-5以外のモデルは公道で大幅にNOx排出量が増えた。2〜5倍までの測定結果の乖離はドライバーの運転技術や走行環境が原因だが、10倍以上の乖離は保護制御が働いたことによるものだった。
このような台上試験と公道試験の測定値の差は日本だけでなく欧州でも報告されている。
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