本記事は、CADを快適な環境で使ってもらうソリューション専門街「CADJapan.com」から転載しています。
最近お客さまからの3D CADに関する意識が「導入して操作を覚える」ことから「いかにして3D CADを利用していくか」に変わってきています。背景として、3D CADで設計したデータを検証やプレゼン、組み立てやE-BOM作成、生産管理連携などに活用しQCDに直結するような効果を求められていることがあります。この「どうやって業務で利用するか」を考える上で必ず直面する壁があります。それは当たり前ですが「根本となるCADデータ(アセンブリや部品)をどうやって作成するか」です。単純そうに見えて奥深いこのCADデータ作成にまつわる話を今日はさせていただきます。
担当者を悩ませた現場の声
あるお客さまの管理部門で設計ツールを2D CADから本格的に3D CADに移行し、既存の生産管理システムと連携させる計画をされていました。生産管理側で受け取れる構成が決まっており、ルールに従った構成である必要3Dモデルは決まった構成ルールになっている必要がありました。これだけの内容であればBOM構成=アセンブリ構成となり、実際にその担当者の方も以下のフローを検討し設計者の方と打ち合わせの場を持たれたそうです。
検討したフロー
- 構成を事前検討しアセンブリ構成を先に作る
- 作ったアセンブリ構成に部品を配置していく。
それに対して下記のような意見が設計者から出てきました。
設計者からの意見
- アセンブリ階層が深いため、先に構成を作ってから部品を配置していくのは面倒。
- 構成情報は結果であって、設計途中(検討段階)では確定しきれない。
- 2D CADでやっていたような「バラシ」は3D CADではできないの?
- そんなやり方じゃ時間ばかりかかって作れない。
返答に困った担当者は当社に相談を持ちかけられたのでした。このお客さまの場合ゴールのアセンブリ構成は決まっているのですが、そこに至るまでの過程を設計者の意見を踏まえた上で検討する必要がありました。
3Dモデル作成手順の提案
われわれはお客さまの要望を踏まえて、以下のような3Dモデル作成手順を提示しました。
- 1.構成を気にせず検討:構想アセンブリを作成し主要構成部品をフラットに配置する。
- 2.バラシ:構想アセンブリをコピーして下位構成のサブアセンブリを作成する(不要な構成部品削除)。
- 3.アセンブリ構成≒BOM構成:バラシ作業で生み出したサブアセンブリをBOM構成になる様にアセンブリする。
- 4.チーム設計による時間短縮:サブアセンブリを設計者で手分けして作成をすすめていきCADデータを作成する。
設計者の意見を消化しつつ、3D CADを使った新しい設計の流れを提示したことで設計側に納得していただくことができました。併せて、E-BOMに必要な属性情報の整理やBOMツールとの連携のも仕組みを作ったことで、このお客さまは後に3D設計にシフトすることができました。
実はこのような3D設計の進め方やアセンブリの組み方は革新的なやり方というわけではありません。当社がお客さまの3D設計を支援させていただく中で積み重ねてきたノウハウを、お客さまにマッチする形にアレンジした一例となります。蓄積したノウハウをお客さまに合うようにアレンジするのが大塚商会のCADエンジニアの腕の見せ所だと思っています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 世界初、アセンブリのすき間を自動で埋めながら外形抽出する機能
エリジオンは、3次元データ変換・活用支援ツール「CADdoctor」の最新バージョンとなる「CADdoctor EX7.0」の販売開始を発表した。 - 無償3次元CAD「Fusion 360」で2次元スケッチを描こう
無償3次元CADのお題は、お手軽にできる“単品モノ”の雑貨が主流です。でも実は、ガチャガチャ可動するアセンブリ、いわゆる“機構モノ”も作れるんです。3次元CADのプロによる楽しい「週末デジタルモノづくり講座」のはじまり、はじまり。 - ミニチュア折りたたみイスを3Dプリンタで出力しよう
最終回は、ミニチュア折りたたみイスの3次元モデルの最終仕上げをした後、FabCafeへGo! 3Dプリンタで無事出力できるか? 記事中で、完成した3次元モデルのダウンロードもできる。