「実験ドリブンCAE」とは? ――効果的なCAE実践のポイントは解析と実験のバランス:CAEイベントリポート(2/4 ページ)
実験とコンピュータシミュレーションによる解析コンサルティングを提供するエステックが、振動・騒音分野を中心とするCAE事例を紹介した。
評価冶具は実験からモデル構築
古本氏はエステックによる、シミュレーションと実験データを融合させた解析モデル作成の事例を紹介した。
評価冶具を正しくモデル化するのは非常にコストが掛かるという。図面がないことが多く、振動・騒音を評価する冶具はさまざまであるといった理由による。そのためモデル化とその検証作業をしようとすると、多くの時間と項数が必要になる。そこで古本氏は、詳細なモデル化作業については省略し、実験データをモデルに与えて代用する手法を、ブレーキディスクを例に紹介した。
まず評価冶具に設置されたブレーキディスクの性能予測のため、CADデータを基に解析用モデルを作成した。だがディスク単体の形状精度は非常によいものの、検証実験と解析結果はあまり一致しなかった。原因は評価冶具の動特性の影響によると考えられたため、評価冶具のモデル化が必要だと判断した。
モデル化では、評価冶具接合面を等価振動モデルとして代用表現してモデルに与えた。評価冶具とブレーキディスクの結合面では十分に剛だと仮定した。周波数依存を持つ6自由度の動特性を加振実験により同定し、その特性をFEMに組み込むことで実験とFEMのハイブリッドモデルを構築した。
実験では下図のように、写真の青い点が応答点、10点の赤い点で加振して、伝達関数を測定した。
そこから6自由度の剛体運動を推定し、それを評価冶具の結合面中心点に複素ばねとして同定し、その特性をモデル化した。
下図のグラフは、横軸が周波数で縦軸がイナータンス(入力する力と発生する加速度との比)となる。
左は評価冶具を剛としてモデル化、右は評価冶具の動剛性を考慮してモデル化したものだ。実験から推定した動特性をモデルに盛り込むことによって、解析結果を高精度で一致させることができる。
ただし、この方法だと、評価冶具の接合面自体を剛と仮定しているが、明らかに弾性体の場合もある。その場合は主成分モード分析(Principal Mode Analysis:PMA)を適用することでこのモデル化方法を拡張できるということだ。「評価冶具のモデル化が非常に困難な場合は、このように実験で置き換えることでシミュレーションを進めることができる。この手法はさまざまな対象に応用可能だろう」(古本氏)。
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