ザイリンクスの16nm世代プログラマブルSoC、消費電力5W以下を実現:オートモーティブワールド2016
ザイリンクスは、「オートモーティブワールド2016」において、16nmプロセスを適用した最新のプログラマブルSoC「Zynq UltraScale+ MPSoC」の動作デモを披露。4コアの「Cortex-A53」やFPGAブロックなどを動作させても、車載情報機器のSoCに求められる5W以下の消費電力になることを示した。
ザイリンクスは、「オートモーティブワールド2016」(2016年1月13〜15日、東京ビッグサイト)内の「第8回国際カーエレクトロニクス技術展」において、16nmプロセスを適用した最新のプログラマブルSoC「Zynq UltraScale+ MPSoC」の動作デモを披露した。
プログラマブルSoCとは、ハードウェアマクロのプロセッサとプログラマブルなFPGAブロックを1ダイに集積したICである。ザイリンクスは、28nmプロセス世代から初のプログラマブルSoCとなる「Zynq」を市場投入。車載用途では日米欧の自動車メーカーのカメラを用いたADAS(先進運転支援システム)などに採用されている。
16nmプロセスを用いたZynq UltraScale+ MPSoCでは、28nmプロセスのZynqよりも大幅な高機能化を実現している。プロセッサは、ARMの「Cortex-A9」2コアから「Cortex-A53」4コア+「Coretx-R5」2コアになった。従来のZynqにはなかったGPUも、ARMの「Mali-400」が追加されている。FPGAブロックは、従来のZynqがローエンドFPGAの「Artix」がベースになっていたが、Zynq UltraScale+ MPSoCはハイエンドFPGAの「Virtex」ベースになった。
Zynq UltraScale+ MPSoCは、既に一部顧客への試作サンプル供給を始めている。自動車メーカーやティア1サプライヤにも供給しており、2017年第3四半期の車載グレード品の量産に向けた評価が行われている段階である。
展示ブースの動作デモで使用したのは、最もFPGAブロックの規模が大きい「ZU9」という品種になる。サンプル供給しているのもこのZU9だ。動作デモでは、最も消費電力が大きくなるCortex-A53の使用率が100%近くになる処理を4コアそれぞれで行いながら、2つのコアをデュアルロックステップ構成で使用しているCortex-R5では注入したエラーパケットの検出/修正を実施し、併せてFPGAブロックとGPUも動作させた。
ザイリンクスの「Zynq UltraScale+ MPSoC」の動作デモ。ノートPCの右側にあるのが評価ボードで、右側のディスプレイに「Cortex-A53」4コアなどの動作状態が、左側のディスプレイに「Mali-400」によるグラフィックス処理の結果が表示されている。ノートPCのディスプレイには、Cortex-A53、Cortex-R5、FPGAブロックの消費電力が表示されている。4コアのCortex-A53で2.23W、2コアのCortex-R5で0.45W、FPGAブロックで1.66W、合計は4.34Wだ(クリックで拡大)
この動作デモにおける、Zynq UltraScale+ MPSoCの消費電力は総計で5W以下に収まっていた。カーナビゲーションシステムをはじめとする車載情報機器のSoCは、消費電力で5W以下であることが求められるが、Zynq UltraScale+ MPSoCもその枠内に収まっていることになる。「高度な情報処理が求められる自動運転システムのSoCは、消費電力が5W以下ではなく10〜15Wでもよくなるという意見がある。しかし、Zynq UltraScale+ MPSoCは、高度な情報処理を可能とする機能を搭載しながら、消費電力は従来の要求である5W以下を満足できている」(ザイリンクスの説明員)という。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 16nm世代の車載プログラマブルSoCでザイリンクスが先手、2017年夏に量産開始
FPGA大手のザイリンクスが車載分野における事業展開を説明。フォードやホンダ、フォルクスワーゲンなどの量産車への採用事例を挙げるとともに、16nm世代のプログラマブルSoC「Zynq UltraScale+」を2017年第3四半期に量産することを明らかにした。 - “早変わりする”運転支援システムの実現へ、FPGAが車載機器に変革をもたらす
車載機器におけるFPGAの利用が本格化している。車載分野での事業展開を強化しているFPGA大手のXilinxは、カーナビゲーションシステムをはじめとする車載情報機器に次いで、再構成可能というFPGAの特徴を生かすことで運転支援システムも有望市場になると見込む。 - ザイリンクスのプログラマブルSoC、2014年から量産車の車載カメラシステムに採用
ザイリンクスは、「オートモーティブワールド2014」において、プログラマブルSoC「Zynq-7000」を用いた車載カメラシステムのデモンストレーションを披露。国内外の自動車メーカーが2014年中に量産を始める市販車のフロントカメラシステムにZynq-7000が採用されることも明らかにした。 - ザイリンクスが28nmFPGA「Artix-7」に車載対応品を追加、「Zynq」を補完
ザイリンクスは、車載ICの品質規格であるAEC-Q100に準拠するFPGA製品群「XA FPGA」に、「Xilinx 7シリーズ」の中でもコストと消費電力を低く抑えたことを特徴とする「Artix-7」を追加した。