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「バブル」に沸いた自動運転は「サスティナブル」になれるのか自動運転技術(1/3 ページ)

自動運転元年ともいうべきさまざまなことが世界各地で起こった2015年。自動運転「バブル」と言ってもいいほどの過熱ぶりだが、今の動きは話して「サスティナブル(持続可能)」なものになっているのだろうか。

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「大義名分ありき」で進むことへの違和感

グーグルの自動運転専用小型車の走行イメージ
グーグルの自動運転専用小型車の走行イメージ

 2015年は「自動運転元年」というべき、さまざまな出来事が世界各地で起こった。

 グーグル(現アルファベット)が自動運転専用の小型車を使った公道走行を開始。ダイムラー、BMW、フォルクスワーゲングループのアウディが共同で、ドイツの地図メーカーHERE(ヒア)を、フィンランドのノキアから約30億米ドル(約3600億円)で買収。そしてウーバーが、米国のピックバーグで「アドバンスド・テクノロジー・センター」を開所し、地元のカーネギーメロン大学の人工知能の研究者をごっそり雇って自動運転の研究を開始。まさに枚挙にいとまがない。

 国内でも、スマートフォン向けアプリなどを手掛けるDeNAが2015年5月、自動運転技術開発ベンチャーのZMPと合弁企業「ロボットタクシー」を設立した。トヨタ自動車も、2015年11月に人工知能に関する研究開発を行う子会社であるTOYOTA RESEARCH INSTITUTE(TRI)を設立するなど自動運転関連の取り組みを加速させている。

ロボットタクシーの設立会見に出席したDeNA 執行役員の中島宏氏(左)とZMP社長の谷口恒氏(右)
ロボットタクシーの設立会見に出席したDeNA 執行役員の中島宏氏(左)とZMP社長の谷口恒氏(右) 出典:ロボットタクシー
TRIの設立会見に出席したTRI CEOのギル・プラット氏(左)とトヨタ自動車社長の豊田章男氏(右)
TRIの設立会見に出席したTRI CEOのギル・プラット氏(左)とトヨタ自動車社長の豊田章男氏(右)。プラット氏は、災害救助ロボット競技会「DARPA Robotics Challenge(DRC)」のプログラムマネジャーを務めたことで知られる 出典:トヨタ自動車

 見方を変えると、こうした自動運転に関する世界の動きは「少しバブルっぽく」感じる。

 なぜなら「実需(実際の需要)」が見えないからだ。大義名分として、「交通事故低減」「環境対策」「渋滞緩和による経済効果」という3つの柱を、自動車メーカーも各国の政府や国際機関も「お題目」のように繰り返す。だが筆者自身が世界各地を実際に巡っていて「自動運転がぜひ必要だ」という「地元の声」を聞いたことは一度もない。「あればあったで便利かもしれない」という程度のイメージを持っている人がほとんど、という印象だ。

 国や地域の政策ありき、大手ITメーカーのビジネス戦略ありき。そして自動車メーカーは、ADAS(先進運転支援システム)の延長線上として、自動運転と接しているように思う。

自動運転の定義

 実需が見えない中、日米欧、そして中国のメディアが自動運転に関する報道を続けている。その中で気になることがある。「自動運転の定義」だ。

 2015年1〜3月期に、NHTSA(米国道路交通安全局)、SAE(米国自動車工業会)、BASt(ドイツ国立自動車研究所)が「自動運転に関する解釈」として、「自動運転のレベル」を一覧表として公開した。

 細かく見ると、NHTSAとSAEではレベルの振り分けが異なる。NHTSAは、自動運転の要素のない手動運転のレベル0から完全自動運転となるレベル4までの5段階に分かれる。SAEも手動運転のレベル0から始まるが、NHTSAのレベル4をレベル4とレベル5に細分化しており、6段階に分けている。

 欧州の自動車メーカーは「SAEの表現方法」を用いている。一方、国内の自動車メーカーと国土交通省が「NHTSA準拠」の姿勢を取っており、自動運転でも「NHTSAの表現方法」を取る場合が多い。

 さらに2015年中頃から、ドイツ政府が国際連合のWP29(自動車基準調和世界フォーラム)のワーキンググループで、「自動運転レベルの表現方法を見直すことを検討したい」と言い出した。

 「自動運転のレベル」は、あくまでも、自動車業界、行政、IT産業界などの「自動運転に関係する人たちの共通言語」として「仮設定」しているにすぎない。よって、レベルの表現方法はこれからまだまだ変わっていくと思われる。

 そうした状況にもかかわらず、メディアの多くは深く考えることもなしに「最近、自動運転の話題が流行なので、ウチでも取り上げたい」といったスタンスを取っているように思える。

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