グローブ型触感センサーを開発、漢方医師の触診をデータ化:医療機器ニュース
富士通は、富士通研究所、北里大学東洋医学総合研究所と共同で、触診時の漢方医師の触感をデータ化するグローブ型触感センサーを開発した。
富士通は2015年12月10日、富士通研究所、北里大学東洋医学総合研究所と共同で、触診時の漢方医師の触感をデータ化するグローブ型触感センサーを開発したと発表した。
漢方医は、西洋医学で診ると疾病には至らないものの完全な健康状態とも言えない未病状態を検知することができる。しかし、一般に、漢方において病変や体調を知るための触診は医師固有の知識や経験に基づいており、診断内容を他の医師が客観的に把握するためのデータ作成は困難だった。また、医師の触診の感触をICTによってデータ化するためには、医師・患者双方にとって、違和感のない程度に柔軟で高感度なセンサーが必要だった。
そこで今回開発されたのが、診察時の手触り感を損ねない程度に柔軟な薄膜圧力センサーだ。同センサーは、誘電体薄膜(エレクトレット)を圧力検知素子として用いており、高感度で低消費電力なフレキシブルセンサーとなっている。また、ポリマーフィルムを使って薄さ100〜300μmという薄膜にし、柔軟性も高めた。
さらに、触感センシングと同期して、医師の手の動きを約0.2mmの精度で検出するシステムも構築。センサーを指の腹に装着し、触診時に医師が触った感覚を数値化した圧力データと医師の手の軌跡を連動させることで、触診の正確な位置と圧力を同期して記録することができる。
今回試作した触感データ取得システムを用いて、触診を模したデータ取得実験も実施した。微小な触診圧力変化にも十分な反応を示しており、圧力センサーとして実際の触診に限りなく近い数値データを取得可能なことが確認できた。
今後、同社はセンサーのさらなる感度向上や適用範囲拡大を検討しつつ、漢方専門医の触診データを大量に蓄積・客観化していく。同システムにより、医師の触診支援につなげるとともに、未病の発見に貢献できるとしている。
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