大手との協業、NDAを結ぶ前に「目的の明確化」が必要な理由:いまさら聞けないNDAの結び方(4)(2/5 ページ)
オープンイノベーションやコラボレーションなどが広がる中、中小製造業でも必要になる機会が多いNDAについて解説する本連載。今回からNDAを結ぶに当たり注意すべき点を説明します。
NDAを結ぶ目的の検討
まず、江戸氏に考えてもらいたいのは、NDAを結ぶ目的です。江戸氏は電気自動車用モーターの小型化技術の開発に成功しました。それを大手自動車メーカーの次世代電気自動車に採用してもらうというのが最終的な目的でしたね。
小型モーターは大手メーカーにも負けない自信作だ。これで大きなビジネスをつかむぞ!
さて、大江戸モーターがCFGモーターズと協業(コラボレーション)するに至るまでのビジネスの流れとしては、例えば、以下のような3つのステージが考えられます。
- NDAを結んで、互いに秘密情報を開示して協業ができるか否かを検討するステージ
- 協業の可能性があると判断された場合に、CFGモーターズの次世代電気自動車用モーターのプロトタイプを共同で開発するステージ
- 上記プロトタイプを商品化するステージ
この3つのステージはあくまでも1つの例であり、必ずしもこの順番を経るとは限りません。大江戸モーターが開発した小型モーターが、そのままCFGモーターズの次世代電気自動車に採用できる場合は「プロトタイプの共同開発」というステージは必要なくなります(ただ、実際は、大江戸モーターの小型モーターを適宜カスタマイズする必要があると予想されるので、実際にはプロトタイプのステージが全くなくなるということはないでしょう)。
もっとも協業までにどのような流れになるとしても、協業の可能性があるかないかを確認するステージがなくなることはありません。そのため、大江戸モーターにとってNDAを結ぶ目的は「CFGモーターズに自社の技術を開示し、必要に応じてCFGモーターズからも同社の技術を開示してもらって、協業できるか否か(共同開発などの次のステージに進めるか)を決定するため」となります。
つまり、NDAはいわば、協業を検討している相手に“自社技術の味見をしてもらう”または“相手方の技術を味見する”ための契約といえるかもしれません。“味見”により、協業の次のステージに進むか否かを決めるための契約です。場面は全く異なりますが、今晩のおかずを何にしようかとスーパーの食品売り場の試食コーナーに行ったときに、試食コーナーでおすすめ食材を味見して、気に入ったら買うという場合の“味見”と同様のイメージです。
NDA契約を結ぶ前に江戸氏は、NDAを結ぶ目的が「CFGモーターズに自社の技術を開示し、必要に応じてCFGモーターズからも同社の技術を開示してもらって、協業できるか否か(共同開発などの次のステージに進めるか)を決定する」点にあることを明確に認識する必要があります。
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