NIの「DIAdem」をエアバスやジャガーランドローバーが採用、製造プロセスを改善:設計開発ツール
National Instruments(NI)と言えば、グラフィカルシステム開発環境「LabVIEW」や、計測ハードウェア「PXI」「ComapctRIO」などが知られている。最近になって、これらと連動する形で注目を集めているNI製品が「DIAdem」だ。従来は製品開発のために用いられていたが、現在は製造プロセスを改善する用途にも用いられているという。
計測機器とその関連ツールの大手企業であるNational Instruments(NI)を代表する製品と言えば、グラフィカルシステム開発環境「LabVIEW」や、計測ハードウェア「PXI」「ComapctRIO」などを管理する「TestStand」などがある。
これらと連動する形で最近注目を集めているNI製品がある。LabVIEWやTestStandによって収集したデータの検索や解析、レポート生成などを行えるツール「DIAdem」である。
同社ドイツ法人のマネージングディレクターでDIAdemの開発を担当するAndreas Haub氏は「DIAdemはもともと、エンジニアが研究開発を行う際に、計測機器によって得たさまざまなデータを分析する用途に向けて開発された製品だ。しかし現在は、企業が研究開発から製造に至るまでさまざまなプロセスを分析するツールとしても利用されるようになっている」とDIAdemが注目を集める理由を語る。
DIAdemが製造業のさまざま場面で利用されるようになっている背景を示す言葉としてNIが用いているのが「ビッグアナログデータ」である。Haub氏と同じNIのドイツ法人でグローバルテクノロジー&マーケティングディレクターを務めるRahman Jamal氏は「IT業界を中心に用いられている『ビッグデータ』という言葉は、ソーシャルネットワークやITシステム関連のデータを指すことが多い。これに対してビッグアナログデータは、リアルワールドから得られる物理現象のデータになる。もちろん計測機器やIoT(モノのインターネット)となる組み込み機器のデータもビッグアナログデータだ」と説明する。
これまでもビッグアナログデータは存在していたが、IoTに代表されるネットワーク接続によって収集は容易になってきている。「だが集めたビッグアナログデータを活用するには同期が重要だ。DIAdemは、ビッグアナログデータの同期をとって、必要な情報を適切に利用できるようにできる」(Jamal氏)という。例えば、スマートグリッド、スマートヘルスなどのような、既存のシステムを効率化する「スマートシステム」の構築にも適用できるとしている。
エアバスとジャガーランドローバーの事例
例えば、航空機を手掛けるAirbus(エアバス)は、さまざまなスマートツールを導入した「未来の工場」に向けた取り組みを進めている。「穴あけ」「計測」「品質検証」「締め付け」という4つの製造プロセスに対応したスマートツールを導入しているが、これらスマートツールを使う工程のデータ分析に用いられているのはDIAdemだ。
Haub氏は「エアバスの事例のような、IoTを活用した製造ラインの改善という意味合いにおいて、エンジニアというよりも企業がDIAdemを求めるようになっている」と強調する。
自動車業界においてもDIAdemに対する評価は高まっている。Jaguar Land Rover(ジャガーランドローバー)は、パワートレイン開発プロセスを効率化するためにDIAdemを導入した。同社が、自動車や車載システムを開発していく上で収集するさまざまな計測データは1日当たり500Gバイトにもなるという。この中からエンジニアが製品開発において正しい判断を行うためのデータを抽出する作業は、基本的に手動で行われてきた。自動化ツールもあるが適用できていた範囲は全体の10%に過ぎなかったという。
ジャガーランドローバーはこのデータ抽出を自動化することで、作業時間を20分の1に短縮できると想定。その自動化プロジェクトでは9つのツールが候補になったが、最終的に選ばれたのはDIAdemだった。現在ではDIAdemによる自動化の適用範囲は95%にまで拡大しており、再テストが不要になったことでテストコストやテスト回数を減らせている。
Haub氏は「NIにとって、自動車関連の計測ツールベンダーという意味では、dSPAECEやETAS、Vector Informatikなどが競合になる。しかしDIAdemは、それら競合ベンダーのツールで収集したデータを含めて分析するツールだ。DIAdemの導入という意味では、これらのツールベンダーと協調していきたい」と述べている。
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