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医療分野にも広がる仮想通貨の技術「ブロックチェーン」とは海外医療技術トレンド(6)(2/3 ページ)

ビットコインのような「仮想通貨」の根幹技術であるブロックチェーンを、医療やライフサイエンスの分野に応用しようという動きが世界で起きている。

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電子カルテのチームがFinTechハッカソンで第1位を獲得

 2015年11月6〜8日、アイルランドのダブリンシティ大学(DCU)イノベーションキャンパスで、「Blockchain Hackathon」が開催された。主催は、アイルランドの暗号通貨/ブロックチェーン専門コンサルティング会社であるChainsmithsで、Fidelity Investments、Deloitte、Citigroupなど、金融グローバル企業が協賛する、金融×IT(FinTech)分野のオープンイノベーションコンテストだ。

図2
図2 アイルランド・ダブリンで開催された「Blockchain Hackathon」 出典:https://blockchain-hackathon.com/

 約150人の参加者が、50時間内でチームを作り、概念実証を競うコンテストで、第1位に輝いたのは「MedVault」というエンジニアチーム。ブロックチェーン技術を電子診療記録(EMR)に応用するというアイデアだった。ブロックチェーン技術があれば、患者から生成されるバイタルデータを時系列に記録し、暗号化/匿名化/電子署名によるセキュリティ機能を実装しながら、真正性、見読性、保存性のいわゆる「電子保存の3原則」を担保することが可能になる。

 そして、彼らが採用したのは、イスラエル・テルアビブのブロックチェーン関連開発スタートアップ企業Coluが提供するプラットフォームだ。Coluは、ブロックチェーンを介した基本的なトランザクションの上に、メタデータ層を構築して付加価値サービスを提供できる点を強みとしている。Coluは2015年10月、Deloitte(カナダのトロントで、ブロックチェーンソフトウェアプラットフォーム「Rubix」を構築)との提携を発表するなど、FinTechの注目企業でもある。

 金融分野から非金融分野へのブロックチェーン技術の適用拡大は、各地で広がりつつある。例えば、MITメディアラボの「Digital Currency Initiative」では、暗号化、経済、プライバシー、分散システムなど、さまざまな分野の専門家が集まって、ブロックチェーンを利用した新規分野の研究を行っている。名前の通り、デジタル通貨など、金融分野が中心で立ち上がったが、医療、行政などへと広がりつつある。

 医療分野のユースケースとしては、ブロックチェーンを利用したドナー登録、医薬品のサプライチェーン管理、ウェアラブル機器データの利用に関するユーザー主導のパーミッションなどが検討されている。また、プライバシー保護の分野では、ブロックチェーンを利用した個人データ保護対策(分散型プライバシー)などの研究が進んでいる。参考として、図3に分散型プライバシー保護プラットフォームの概要を示す。

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図3 分散型プライバシー保護プラットフォームの概要(クリックで拡大) 出典:MIT Media Lab「Decentralizing Privacy: Using Blockchain to Protect Personal Data」

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