ロボット治療器「HAL」が8カ月で薬事承認を取得、次は保険適用を目指す:医療機器ニュース
サイバーダインは、同社のロボット治療器「HAL医療用下肢タイプ」が厚生労働省から医療機器の製造販売承認を取得したと発表した。今後は公的医療保険の適用に向けた準備を進める。
サイバーダインは2015年11月25日、同社のロボット治療器「HAL医療用下肢タイプ」が、同日付で厚生労働省から医療機器の製造販売承認を取得したと発表した。医薬品医療機器等法(薬機法)に基づく承認番号は「22700BZX00366000」。今後は公的医療保険の適用に向けた準備を進める。
HAL医療用下肢タイプは、装着した患者の生体電位信号に基づいて下肢の動作補助を行うロボット機器だ。この動作補助による歩行運動を繰り返すことで、歩行機能を改善する効果が得られるとしている。今回の製造販売承認では、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や、脊髄性筋萎縮症(SMA)、筋ジストロフィーといった緩徐進行性の神経・筋疾患患者への安全性と進行抑制効果が治験によって認められた。ロボット治療機器としては、日本初の薬事承認取得になるという。
HALは身体機能を改善/補助/拡張できるサイボーグ型ロボットだ。今回の承認を受けた医療用の他、作業支援や介護、福祉といった用途にも製品を展開している。
最大の特徴は、サイバーダイン代表取締役で、筑波大学大学院 教授の山海嘉之氏が開発した3つの制御機構になる。患者の動作意思を反映した脳・神経系由来の生体電位信号に従った制御を行う「サイバニック随意制御」、あらかじめ組み込まれたプログラムを基に動作を生成する制御を行う「サイバニック自律制御」、質量や関節部の粘性などによる装着感を軽減できる制御を行う「サイバニックインピーダンス制御」である。これらの制御を関節ごとに自在に組み合わせたサイバニックハイブリッド制御が構成できるため、患者の症状や身体機能、使用環境などに応じた細やかな対応も可能だ。
優先審査対象となり通常の3分の2の期間で承認を取得
HAL医療用下肢タイプは希少疾病用医療機器の指定を受けているため、製造販売するための薬事承認における優先審査対象となっていた。2015年3月25日の申請から、同年11月10日には薬事・食品衛生審議会(医療機器・体外診断薬部会)の審議で承認に向けた了解を得ていた。今回の発表は正式承認を受けてのものとなる。なお、通常の医療機器の審査には12カ月かかるが、今回は優先審査対象だったこともあり8カ月で済んだ。
今回の承認範囲は神経・筋難病疾患となっている。ただしサイバーダインは、既にHTLV-1関連脊髄症(HAM)などの主に痙性のある対まひ症に対する治験も2014年9月から実施しており、承認範囲の拡大を目指す方針だ。
なお、HAL医療用下肢タイプは、ドイツで既に製造販売の承認を受けている。2015年10月には、急性期から回復期に相当する期間を終えた全ての対まひ患者の治療に対して、ドイツの公的医療保険を適用可能にするための申請を行ったところだった。
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