トヨタとベンツに見る「Car」と「Automobile」の違い:プロダクトデザイナーが見た東京モーターショー2015(4/7 ページ)
「東京モーターショー2015」における各自動車メーカーの展示内容やコンセプトカーをプロダクトデザイナーが斬る。トヨタ自動車、日産自動車、メルセデス・ベンツ、マツダなどの展示から感じた「Car」と「Automobile」の違いとは?
日産の「IDSコンセプト」に感じる不安
トヨタとともにフルラインアップをそろえる日本メーカーである日産自動車は、メルセデス・ベンツやトヨタともまた違ったアプローチを感じる。今回の主役は、自動運転機能を前面に出したコンセプトカー「IDSコンセプト(以下、IDS)」だ。このIDSは、メルセデス・ベンツのF 015やVision Tokyoのように自動運転を備えるのは同じだが、こちらは個人が所有するクルマをイメージしているようだ。
自動運転の「パイロットドライブモード」と、ドライバーが運転を楽しむ「マニュアルドライブモード」の二面性を備えるとしている。2つのドライブモードに合せてインテリアがトランスフォームするというのが特徴だが、ここで感じたのは感動とかワクワクする感じとかではなく不安だ。「パイロットドライブモード」に変形する際、IDSのステアリングは格納され消えてしまう。
「ゆりかもめ」のようにクローズドのレーンを順番に並んで走る乗り物であればまだしも、コンセプト動画で描かれているような混合交通の中でモードを切り替えながら走るクルマでは、もらい事故とか突然の飛び出しのような、外部要因から起こり得る「万が一の事態」を想像してしまう。そういった事態も含めセンシングと制御技術で回避するという理屈であろうことは頭では理解できるものの、操作系の主役の1つであるステアリングがないというのは何とも不安だ。
IDSで感じたもう1つのことは、プレゼンテーションの訴求としてはCarなのだけど、クルマのキャラクター的には必ずしも個人で持つ必要がないAutomobileに感じた。カーシェアリングのように個人移動の道具だけど公共交通のようなもの。CarとAutomobileの境界線なんてものは各人で異なるところが大きいと思うが、移動時間中の「便利でしょ?」「楽ちんでしょ?」といった機能面の訴求が大きすぎるのか、持つ歓びであるとか、使い続けることでのモノへの愛着といった感情面での要素を、個人的にはあまり強く感じなかったからである(言うは易く行うは難しな部分であるが)。
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