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ソニーがイメージセンサーで次に起こすブレイクスルー小寺信良が見た革新製品の舞台裏(4)(2/5 ページ)

さまざまな映像製品に革新をもたらし続けているソニーのCMOSイメージセンサー。「自分越え」の革新を続けるその裏側には何があるのか。革新製品の生まれた舞台裏を小寺信良氏が伝える。

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CCDからCMOSへ転換のなぜ

―― そもそもソニーはCCD時代から、イメージセンサーとしてはかなり強いメーカーでしたよね。それゆえにプロ用カムコーダなどで圧倒的な地位を築いてきたともいえるわけですが、それがなぜCMOSへ行くことになったんでしょう。

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ソニー デバイスソリューション事業本部 イメージングシステム事業部 副事業部長の大木洋昭氏

大木 われわれが事業を考える時は、まず将来を必ず考えます。そう考えると、やはり映像でできることの可能性の一つの軸に、スピード、高速読み出しの価値というのは必ず出てくるだろうという確信がまずありました。

 そうなるともうCCDでは限界がくるというのは分かってましたので、新たにイノベーティブなチャレンジをしていかないといけない。“イノベーションのジレンマ※)”を自分たちで超えていくというのを、実践していかないといけないという決断ですね。

※)市場における優良企業が、市場シェアを持つあまり改善をベースとした持続的イノベーションのみにこだわり、業界構造を変革するような破壊的イノベーションに対応できないというような状況。

大場 もう一つ大きかったのは、当時CCDは高画質で、CMOSは安かろう悪かろうだったんですね。ただ将来われわれが作るCMOSって、今のCMOSと違う。「CCDを超えるCMOSを作るんだ」とまず目標セットしたわけですよ。

 徹底的にCCDで培った高画質技術を生かしつつ、高速・低消費電力などのCMOSの特徴と融合させるという発想で開発を進めて、画素特性はCCDで培ったノウハウを全面的につぎ込み、回路の方はADコンバータのアーキテクチャを新たに考えて搭載したというところはあります。今振り返ると、最初そこに目標設定したことが大きかったですね。

裏面照射型CMOSで先行し続ける理由

―― イメージセンサーの競争の中で、個人的には一番大なインパクトがあったのは、裏面照射型の登場だったと思っているんです。2009年に発売された「HDR-XR520V」に搭載され、その漆黒の黒の表現に驚いたものですが、製造や画質において他社が全く追従できていない状況が今も続いています。他のメーカーはなぜできないんでしょうか?

大木 非常に難しいのは、200〜300mmの口径を持つウエハーをきちんと平たんにするというところではないでしょうか。加えてそれと基板をはり合わせるという技術も、ノウハウが必要なところです。回路の部分とセンサーの部分をそれぞれ作って、貼ってつなげるという工程でいえば、開発当初からやり方は変わりません。しかし、一つ一つの均一性だとかを質的に高めていくところが、非常に製造ノウハウが必要なところです。

大場 他社さんが苦しんでる部分は、歩留まりと画質だと思います。きちっと貼り合わせて特性を出すという基本的な問題も悩まれるところではないでしょうか。あとCMOS構造ならではの弊害をどうやって抑えるんだと、われわれも相当悩んだし、他社も悩んだと思うんですよね。

―― 弊害とは具体的に何でしょう?

大木 主に画質劣化ですね。そもそも電気的に動く動かないみたいな歩留まり的な話もありますし、絵が出るにしても、いかに欠陥が少ない美しい画像を出すか。もうちょっと細かいことをいうと、暗電流とか傷だとか、その辺が何かしらおかしいと、絵に出てくるんですね。

―― そもそも裏面照射型CMOSを作っているというメーカーって、他にどういうところなんでしょう。

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ソニー デバイスソリューション事業本部 イメージングシステム事業部 IS事業戦略部統括部長の大場重生氏

大場 われわれの知る範囲に限りますが、ある程度以上の規模で量産をしていると認識しているのは、韓国のサムソン電子や台湾のファウンドリ(半導体デバイスの生産を請け負う事業体)TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)の裏面照射型ファウンドリを活用しているオムニビジョン、オン・セミコンダクターなどですね。

―― iPhoneのカメラにしても、ソニー製だというところはよく知られているところですが、裏面照射でソニー以外の採用って、コンシューマ商品ではあんまり聞かないですよね。

大場 コンシューマでも産業用途でも同様ですが、裏面照射は、感度が良くてもノイズが大きいと良くないんですね。ソニーの裏面照射ではノイズの低減も実現しているため、その辺りが採用いただいている理由になっているんじゃないかと思いますね。

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