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“印刷”のCortex-M0から64bit化を推進するCortex-A35、mbed OSまで、ARMの示す未来像ARM TechCon 2015基調講演リポート(1/4 ページ)

英ARMが同社の取り組みを紹介する「ARM TechCon 2015」を開催した。内容は多岐にわたるが、ここではCTO Mike Muller氏による基調講演から、ローエンド64bitCPUやセキュリティ、mbed OSなど、ARMの目指す未来像について紹介する。

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NFLとARM TechCon

 2015年11月10日〜12日の3日間、カリフォルニア州のサンタクララコンベンションセンターで「ARM TechCon 2015」が開催された(Photo01)。開催規模はおおむね前回と変わらず、コンベンションセンターの1Fほぼ全部と2階の一部を使って行われた。

サンタクララコンベンションセンター(SCCC)
Photo01 サンタクララコンベンションセンター(SCCC)

 さて本題に入る前にちょっとグチを。昨今のシリコンバレーの家賃高騰ぶりは半端ないのだが、これもあってサンフランシスコ中心部はまともなホテルだと一泊400USD以上。数年前は一泊50USD程度だったモーテルですら今では一泊200USDとありえない金額になっている。幸いシリコンバレーといってもサンタクララのあたりはそこまで跳ね上がっておらず、なので筆者はそこからもう少し北東にあるフリーモントあたりに宿を取るのが常だった。このあたりだとおととしあたりまでは一泊100USD未満で泊まれたからだ。

 この図式が崩れたのは2014年からで、フリーモントですら一泊200USDは当たり前、2015年は300USD近いホテルが続出。今回はいろいろ技を駆使してなんとか抑えたが、それでも11月9日〜11日は一泊189USDというありさま。理由はこれ(Photo03)である。

アメフトがお好きな方ならごぞんじ「Levi's Studium」。ARM TechCon 2015の会場から至近距離にある
Phoot03 アメフトがお好きな方ならごぞんじ「Levi's Studium」。ARM TechCon 2015の会場から至近距離にある

 2014年に完成したここ、いきなりNFL「San Francisco 49ers」の本拠地として使われ始めており、2016年2月のスーパーボール会場にもなっている。収容人数は6万8500人だそうだが、問題はスタジアムに6万人超が入れたとしても、試合の前後に彼らが泊まれるホテルがどこにもない事だ。

 サンノゼ周辺のホテル全部をあわせてもそれだけのお客は収容しきれないので、パロアルトやフリーモント、ミルピタスなど半径20マイル以内のホテルは全部Levi's Statiumの観客が流れ込むようになり、必然的に高騰化したらしい(と、泊まったホテルのカウンターの兄ちゃんがぼやいていた)。

 実際安いホテルを探すと、南東に40マイルほど下ったギルロイとか南に40マイル下ったサンタクルーズとか、朝は片道1時間以上かかる距離まで離れないと見つからない始末である。それか、モーテルの中でもかなりグレードが落ちるところを探すかだが、最近はサンノゼ近辺もそれなりに物騒な事を考えると、ちょっと選択する気にはなれない。おまけに円安が加わって、筆者の財布をモロに直撃してくれる。

 サンタクララコンベンションセンターはちょくちょく業界では利用されるのだが、2016年はホテルの選択に相当悩む事になりそうなのが、今から憂鬱である。

順調なプリンティングをアピール

「ARM TechCon 2105」のフロアプラン
Phoot02「ARM TechCon 2105」のフロアプラン。First Floor中央のグリーンが展示会場だったが、完全には使いきれていない感じ。基調講演はMission City Ballroomで行われたが、ほぼ満席だった

 さて本題。今回ARM TechCon 2015ではなんと5本もの基調講演が開催された。初日は同社CTOのMike Muller氏による“Innovation is Thriving in Semiconductors”。2日目は同社CEOのSimon Segars氏による“Building Trust in a Connected World”とTwentieth Century Fox Home EntertainmentのDanny Kaye氏による“The Future Movie Experience is Already Here”。

 最終日はOracleのRobert Clark氏とLemon LabsのEric Klein氏による“Broadening Innovations Horizons”、それとGoogleのColt McAnlis氏による“The Hard Things About the Internet of Things”である。今回はこのうち、ARMの製品やアーキテクチャの説明をまとめておこなったMile Muller氏(Photo04)の講演の内容をお届けしたい。

ARM CTOのMike Muller氏
Photo04:ARM CTOのMike Muller氏。Muller氏はARM設立当時から在籍(というか、ARMの元となったArcon ComputerのDirectorだった)しており、2001年からは取締役会のメンバーでもある。

 さて、何だかんだといいつつ同社はBBC Micro(ARMの前身にあたるArcon Computerが開発製造したマイコン)が大好きな訳で、話はBBC Micro 1からスタートして最新のmicro:bitに及んだ(Photo05)。ARM1が登場してから30年の間にプロセス技術が3μm→20nmまで縮小した結果として、ARM1より多いトランジスタ数と高い性能のコアがはるかに小さいサイズで製造できるようになった。これは単純にムーアの法則そのままなのだが、続いてMuller氏が取り出したのはプリンティングで製造したCortex-M0である(Photo06)。

左から"BBC Model B"
"ARM1","ARM Holdings","BBC micro:bit",Photo05 写真の上が切れているのだが、本来は左から"BBC Model B","ARM1","ARM Holdings","BBC micro:bit"となっている。ちなみにBBC model Bはプロセッサに6502を使っているが、開発を行ったのがAcorn Computerだった。
ダイサイズは不明だが、ウェハ(というかフィルム)は200mmっぽいところからみると、おおむね45mm×45mm程度の大きさとみられる
Photo06 ダイサイズは不明だが、ウェハ(というかフィルム)は200mmっぽいところからみると、おおむね45mm×45mm程度の大きさとみられる

 現在のプロセスは2μmで、これはARM1より若干小さい程度であるが、このプロセスはCD-ROMよりもやや小さく、DVDよりは大きい程度でしかない。この先に微細化が順調に進めば、2020年にはCortex-A5すらプリンティングで製造できる程度まで回路規模を大きくできる事を紹介した(Photo07)。

2020年には100KGates/平方cmあたりまで回路規模も増やせるから、それなりの動作周波数が期待できる
Photo07 もちろんこれは回路規模だけの話で動作周波数のあがり方はまた別だが、それでも微細化すると高速化に有利という理屈はCMOSと同じであり、2020年には100KGates/平方cmあたりまで回路規模も増やせるから、それなりの動作周波数が期待できる

 これによるメリットはもちろんコストダウンであり、従来のCMOSベースよりも安価に半導体が製造できる事になる。現状ではまだプリンティングでの製造には課題が多いが、それでも着実に進んでいる事をMuller氏はアピールした。

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