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クルマの自己診断機能「OBD2」の用途は“診断”だけじゃないいまさら聞けない 電装部品入門(22)(5/5 ページ)

今やコンピュータの塊と言ってもいいクルマ。それらコンピュータが正常に動作していることを確認するための自己診断機能が「OBD2」だ。整備士などがOBD2から診断情報を取得するコネクタが全ての車両で同じことから、最近ではスマートフォンと組み合わせて他の用途にも利用されるようになっている。

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「OBD2」の活用

 OBD2は車両の不具合を認識する、不具合を修理するという自動車関係者に限定された使い勝手しかないように思いますが、実はそうでもありません。

 OBD2の規定では、先述したように、

車両と診断機とを接続するためのコネクタ形状(台形16ピン)および最低限必要になる信号線の「コネクタ上での配置(ピン配置)」

を明確に定めました。

 これは裏を返せば、車両制御に必要なセンサー値が「同じ形状のコネクタかつ同じピン配置」に全社共通で存在しているということです。

 このデータを活用すれば、エンジン回転数はもちろん、水温や燃料噴射量なども簡単に情報として取り出すことができます。

 実際に私が使用しているレーダーは、DLC接続を行うことでさまざまな情報を簡単に表示できるようになっています。

 OBD2のデータはもちろん、それをもとに計算した燃費計なども表示できます。

「OBD2」を活用した燃費計
「OBD2」を活用した燃費計

 以前は各センサーの信号線を分岐させてメーターなどに入力して表示させるといった手間とお金が掛かる手法しかありませんでしたが、OBD2の普及は思わぬメリットをもたらしました。

 後付けの安いカーナビゲーションであっても、DLCから簡単に抽出したデータとの連動で細かな制御を行えるようになってきており、コストパフォーマンスは飛躍的に向上していると言えます。

 個人でスキャンツールを購入することは高額で趣味の範囲を超えるので手が出せなかったのですが、最近ではスマートフォンのアプリで読み出せるようになっているみたいですね。

 話題になっているのは、アプリをダウンロードした状態でDLCにBluetooth機構を搭載した機器を取り付け、スマートフォンで受信することで、スキャンツールとして使用できるというものです。

 他にもいろいろなパターンがあり、今後もさらに増えていくとは思いますが、悪用されないようにだけはしたいですね(設計者さん、対応お願いします)。

 スマートフォンの普及によって、場所を問わず多くの方の手元に、PCとほぼ同じ機能のデバイスを存在させられるようになりました。

 従来のシステムは、システム自体にコンピュータ機能を持たせるという完結型が多かったと思いますが、これからは使用者が所有しているスマートフォンの能力を活用し、コストを抑えた利便性の高いものが多数出てくると思います。

 それは自動車も例外ではなく、ドアの施錠や開錠はもちろん、エンジン始動や発進の機能はコンセプトカーなどで既に存在していたように記憶しています。

 今では想像もできないような自動車のシステムもきっと出てくるはずですので、10年後の当たり前がどういった世界なのか非常に楽しみです。

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筆者プロフィール

カーライフプロデューサー テル

1981年生まれ。自動車整備専門学校を卒業後、二輪サービスマニュアル作成、完成検査員(テストドライバー)、スポーツカーのスペシャル整備チーフメカニックを経て、現在は難問修理や車両検証、技術伝承などに特化した業務に就いている。学生時代から鈴鹿8時間耐久ロードレースのメカニックとして参戦もしている。Webサイト「カーライフサポートネット」では、自動車の維持費削減を目標にしたメールマガジン「マイカーを持つ人におくる、☆脱しろうと☆ のススメ」との連動により、自動車の基礎知識やメンテナンス方法などを幅広く公開している。



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