クルマの自己診断機能「OBD2」の用途は“診断”だけじゃない:いまさら聞けない 電装部品入門(22)(3/5 ページ)
今やコンピュータの塊と言ってもいいクルマ。それらコンピュータが正常に動作していることを確認するための自己診断機能が「OBD2」だ。整備士などがOBD2から診断情報を取得するコネクタが全ての車両で同じことから、最近ではスマートフォンと組み合わせて他の用途にも利用されるようになっている。
故障コードのDTCはアルファベット+4桁の数字
さらにOBD2では、必ず異常と認識しなければいけない不具合(環境に影響する領域)に対する故障コードも固定化し、定められた不具合に関しては全メーカー共通で同じコードを使用するように規定しています。
故障コードはDTC(Diagnostic Trouble Code)と呼ばれ、頭文字にアルファベット、その後4桁の数字で表されます。
(例)P0301:1番シリンダー失火検知
頭文字のアルファベットは
- P:Power Train(パワートレイン)
- C:Chassis(シャシー)
- B:Body(ボディ)
- U:CAN(Controller Area Network)
と規定され、主な目的である環境保護の観点で見れば、「P」がメインになると考えることができますね。
数字の部分は左から1番目の部分が「0」であれば固定化されたDTCであることを意味します。
「1」や「3」であれば自動車メーカーが定められたルール下であれば自由に設定できる、といった細かな話もあります。もし興味がある方は、標準規格のSAE J2012もしくはISO 15031-6をご参照ください。
先ほど例に出したP0301の場合、失火している=未燃焼のまま混合気が排出されるという観点から、OBD2上で必ず異常と認識しなければいけない不具合と捉えることができます。
実際に一番左の数字は「0」ですから、固定化されたDTCであると分かりますね。
これらのDTCは、具体的な不具合部品名が設定されている場合があります。しかしあくまでもセンサー値上で異常が発見されたということであり、センサーが故障していると限定しているわけではありません。
センサー値が異常と読み取ってしまったのは結果であり、そうなってしまう他の原因も含めた診断を行わなければ、誤診断になってしまします。このため、DTCによる診断には幅広い知識と経験が必要になります。
余談になりますが、例に出したP0301について少し深堀りしてみましょう。
失火と聞くと「スパークプラグの火花が飛んでいない」というイメージをしてしまいがちですが、実際にスパークプラグに火が飛んでいるかどうかは誰も見ることはできませんし、センサーを設置するのも限りなく困難です。
そこで一般的な失火検知方法は「正常に点火(燃焼)できなかった時に起こるエンジンの不規則な振動」を基に、異常と思われるシリンダーの場所を間接的に特定しています。
燃料噴射状態が悪くて点火できなくても失火検知になりますし、機械的にピストンとシリンダー間の気密性が損なわれている状態なのかもしれません。
第1に「DTCの意味」をしっかりと理解した上で、発生状況や再現性をベースに候補を絞り込んで行き、最終的な処置方法を決定します。この辺りが最近のメカニックに求められる「論理的な診断の基礎」です。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.