作ったモノを売るときに知っておきたい「法律」の話:何がOK? 何がNG?(2/3 ページ)
個人でモノづくりを楽しんでいる皆さんの中には、「自分の作品を売ってみたい」と考える方もいるはずだ。しかし「売る」となると、何に注意したらいいのか全く分からない……。そんなときに知っておきたい「法律」の基本について、シティライツ法律事務所の水野祐弁護士に伺った。
著作権と意匠権をめぐる2つの事例
自分が作ったものは「著作物」なのか、「実用品」なのか……。最もややこしいのが著作権と意匠権をめぐる問題だ。実際に米国では、これらをめぐる事案も発生している。
「ぬいぐるみ」は実用品? ケイティ・ペリーの「Left Shark」問題
2015年2月、アメリカンフットボールの大会「スーパーボウル」で歌手ケイティ・ペリーのハーフタイムショーが披露された。そのショーのバックダンサーとして、サメの着ぐるみを着たダンサーが登場、人気を呼び、数日後には米国の3Dデータ共有サイト「Thingiverse」に似たようなサメのキャラクターの3Dデータが「Left Shark」として投稿された。
これを見たケイティ・ペリー側は、「著作権侵害だ」としサービス側にデータ削除を申請。データは一度取り下げになったが、複数のユーザーから異議申し立てがあり、復活した。
「実は着ぐるみ(ぬいぐるみ)は、著作物か実用品なのか、微妙なラインだと考えられています。今回の場合も、キャラクターの3Dデータ(著作物)を入手し、それを元に作成していたら、著作権侵害により取り下げられていた可能性が高かったでしょう。しかし、ぬいぐるみ(実用品)を見て第三者が3Dデータを作成する行為は、ぬいぐるみについて意匠権登録(アメリカではDesign Patent)がされていない以上、著作権侵害には該当しない、とも考えられます」(水野氏)。
クリエータ同士のバトルも、「Penrose Triangle」問題
米国の3Dデータ共有サービス「Shapeways」では、クリエータ同士の争いも発生している。ある作者が、「Penrose Triangle」という錯視を使った作品を手掛け、3Dデータの公開は行わずに、造形した現物のみをShapeways上で販売し始めた。その数日後、この作品とそっくりな3DデータがThingiverseに公開されたのだ。
これを発見した作者はすぐさま著作権侵害を訴え、Thingiverseは一度取り下げたが、「侵害はない」と主張するコミュニティの意見により、データを復活させた。
「この事例のポイントは、当初Shapewaysにおいては『現物のみ』で販売を行い、3Dデータを公開していなかったという点です。もし、著作物に該当する『3Dデータ』も一緒に公開していれば、たとえ似た作品を作った作者が『コピーはしていない』と述べても、3Dデータの著作権侵害で戦える余地は十分にあったでしょう。しかし、この件は3Dデータの公開をしておらず、現物のみの販売でした。オブジェである『Penrose Triangle』は実用品とみなされ、意匠権登録も行われていなかったことから、著作権侵害は認められないと運営者側は判断。削除申請も認められなかったようです。3Dデータもオープンに公開していれば、むしろ守られた可能性があるという点において倒錯的な事案ですよね」(水野氏)。
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