ダイハツ「キャスト」は「テリオスキッド」や「ミラジーノ」の後継とは限らない:クルマから見るデザインの真価(7)(5/5 ページ)
3つのモデルを同時開発したというダイハツ工業の「キャスト」。それらのうち「アクティバ」は「テリオスキッド」、「スタイル」は「ミラジーノ」の後継と言われることもある。しかし、同社のデザイン担当者の考え方を聞くと、必ずしもそうではないようだ。
売り場に「キャストさん」を連れて来る導線もセットで必要
今回試乗もしながら実車を見ていった、キャストのスタイルとアクティバの2モデル。ミラジーノやテリオスキッドの後継車と考えるならば、メインストリームのハイトワゴン系とは異なるスタイルを持つクルマとして上手くまとまっていると感じる。
しかし、「キャストさん」像やその「キャストさん」のライフスタイルのシーンを切り取ったときにフィットするクルマ、これから獲得したい顧客層、といった話を聞いていくほどに、スタイルとアクティバ、そしてこれから出るスポーツという3モデルの振り幅がもっと大きくてもいいのではないのかなぁ? という、何かへの遠慮感のような、ちょっと物足りない感じのような、何ともモヤモヤとしたものも同時に残っている。
もちろん、ミラジーノやテリオスキッドからの買い換えの顧客層もいるだろう。その受け皿となるモデルだというのであれば、それはビジネス上での判断だ。ただ、せっかくの同時3モデル開発というワザをそれだけに留めるのはもったいない。
今回のインタビューの中で出たような、これまでダイハツの顧客にいないタイプの「キャストさん」も顧客に加えたいというのであれば、クルマというハードウェアとどまらず、そのキャストさんを売り場に連れて来る導線の部分までセットでデザインが関わることは、これからのための余白で残っている部分のように思える。
Profile
林田浩一(はやしだ こういち)
デザインディレクター/プロダクトデザイナー。自動車メーカーでのデザイナー、コンサルティング会社でのマーケティングコンサルタントなどを経て、2005年よりデザイナーとしてのモノづくり、企業がデザインを使いこなす視点からの商品開発、事業戦略支援、新規事業開発支援などの領域で活動中。ときにはデザイナーだったり、ときはコンサルタントだったり……基本的に黒子。2010年には異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。最近は中小企業が受託開発から自社オリジナル商品を自主開発していく、新規事業立上げ支援の業務なども増えている。ウェブサイト/ブログなどでも情報を発信中。
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