第42回 ウェアラブル:前田真一の最新実装技術あれこれ塾(4/6 ページ)
実装分野の最新技術を分かりやすく紹介する前田真一氏の連載「最新実装技術あれこれ塾」。第42回はウェアラブル機器について解説する。
4.ニーズとシーズ
ウェアラブル端末はニーズ(needs=必要性)よりもシーズ(Seeds=供給側の状況)が先行した商品です。
シーズには技術的シーズとマーケティング的シーズがあります。インターネプコン ジャパンやJPCA Showを見ていると、日本の素材メーカーの力はやはり優秀で、多くの素材を開発していますが、セットメーカーの元気がなく、技術シーズはあるが、ニーズがない状態です。
Appleの故スティーブ・ジョブズ氏はマーケット・シーズを考えて製品化し、それをプレゼンする名人でした。
ジョブスは、それまで世の中には存在はしたが、ユーザーが買いたいとも思わなかった製品を魅力的な商品にまとめ上げる天才でした。さらに、ユーザーが考えもしなかったその商品を使うことで現れる新しい世界のイメージをプレゼンする名人でもありました。
一般的には、ユーザーが考え、必要とする製品は、現在ある製品を元に、「もう少し使いやすく」「もう少し高機能に」など改善的な製品となります。
社会のニーズは保守的になります。いくらマーケットリサーチをしても改善的な商品は開発できますが、革新的な商品は開発できません。しかし、現在のウェアラブル端末はまた別のマーケットシーズに基づいて発表されているように思えます。
iPhoneが発表されて7年、iPadが発表されて4年がたち(「エレクトロニクス実装技術」2014年9月号発行時点)、スマートフォンもタブレットも先行者利益が得られなくなってきています。特にスマートフォンは完全にコモデティ化し、マーケットが新興国に移り低価格化が急激に進んでいます。これまでスマートフォンで高収益を得ていた会社ほど、新しい機器を開発してスマートフォンで失った収益を補う必要があります。
ウェアラブル機器は、機器の販売だけではなく、ウェアラブル機器のハブとしてのスマートフォンに付加価値を付け、コモデティ化を避けるためにも好都合です。
このため、ウェアラブル機器ではニーズを創生するために商品の発表、発売を先行しています。
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