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ボルボのクリーンディーゼルは大排気量NAガソリンエンジンくらい気持ちいい今井優杏のエコカー☆進化論(20)(1/3 ページ)

フォルクスワーゲンの排気ガス不正でディーゼルエンジンに対して厳しい目が注がれつつある。しかし、ディーゼルエンジンの中低速の大きなトルクや良好な燃費といった長所まで否定するのはいかがなものか。ボルボのディーゼルエンジン「D4」を搭載する車両は、その良さを実感させてくれる仕上がりになっている。

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自動車業界を揺るがすフォルクスワーゲンの排気ガス不正

※写真はイメージです
※写真はイメージです

 今まさに、自動車業界に大激震が走っているのは皆さんもご存じのことだと思います。そう、ドイツ・フォルクスワーゲン(以下、VW)のディーゼルエンジン搭載車における、1100万台にも上る車両へのソフトウェア不正の件です。

 このソフトウェアは、米国の厳しい排気ガス規制を逃れるためのもの。いずれも米環境保護局(EPA)の規定する試験方法「FTP-75」をクリアしていたとされた車両でしたが、文字通りフタ=ボンネットを開けてみれば、それは実は虚偽の数値だったという事件です。

 「FTP-75」の計測規定に沿った走行モードに入ったときにはきっちりと規定をクリアする走行をこなし、そのモードから外れた一般道走行に切り替わったら一気にNOx(窒素酸化物)を派手に排出するように豹変するというのがその内容でした。

 個人的にこの問題、目に見えて消費者が気付く「燃費」自体はとっても良かったという点が気になりました。ディーゼルの燃焼は高温で行えば燃費が良くなりますが、NOxがたくさん出てしまう。だからこそ、燃費を良くしてNOxを下げることこそに各社の触媒技術の拮抗がありました。データとして消費者の把握できない目に見えない部分、つまりNOxの排出量に問題があったこと。自分が知らず知らず踏んでいたアクセルの先にそういうことが起こっていたなんて、さぞかしショックだったでしょう。

 公式にも日本法人が謝罪するなど、原因に関しては思った以上に急ピッチで究明が進んでいますし、VWが何としてでも誠意を見せようとしているのは確かでしょう。でも、なぜ?(クルマを売りたかったのはもちろん重々承知ですけど、でもこうしてメッキが剥がれることを危惧する人間はいなかったのでしょうか)誰が? どのポジションの人の指示で? など、人為的なことなどがあらわになって、欧州の支配層の封建的な秘密主義によって相当先になったりしなければさらにいいなと思います。

 真相が闇に葬られることのないようにしてほしい。VWグループは、今や10ものブランドを持つ巨大な自動車帝国を築く大企業。血族のように結ばれたトップの結束をほどくのは簡単なことではなさそうな気がとってもしてしまうのが杞憂であればいいのにと。

 現実、ディーゼルエンジンの触媒にも使用されている白金(プラチナ)関連株価にも影響が出るなど、自動車が複合工業製品であるが故の複雑な問題が噴出していますし、NOxとかよく分かんないけど何かだまされた気分! となった人々の不満や、日本にもともと強く刷り込みのように根付いていたディーゼル不和というかアンチディーゼル論ももしかしたら後押しして、クリーンディーゼル全体が薄いモヤのような不信感に包まれてしまわないように。だけど、メディアもスキャンダルを追いかけるのに躍起になっていることは事実。

 素晴らしいテクノロジーが生まれる瞬間よりも、ゴシップの方が視聴率を取れるという報道の構造においては仕方のないことなのかもしれません。しかし、そんなように熱心なマスコミが、もしかしたらこの秘密結社の結束をもほどくキッカケになるとすれば、何だか皮肉なことのような気もします。

 しかし一番大事なことはそう、もちろん環境への関心が高いからこそVWのクルマを選んだ全ての顧客に対し、選んだことを後悔するような境地に陥れたということを、会社の存続と同じくらいに真剣に考えて欲しいというのは大前提として、VWが近年押し出してきていたクリーンなイメージと発表されるデータを心から信じてクルマを販売してきた、世界中の現地法人や販売店の皆さんの落胆をきっちり回復することではないでしょうか(それを盾に真実をケムに巻かれてもハラ立ちますけど!)。

 今後しばらく、販売台数はガタガタに落ちるでしょう。ブランドイメージというのはそういうものですから、質実剛健、真面目一徹が魅力だったVWだけに、信頼を失墜したその代償は悲惨な結果を招くことになるはず。そうしたら、販売店は大きな打撃を受けるでしょう。悲しいかな、本社はそこまで面倒を見てくれないでしょうし……。

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