組み込みモジュール「COM Express」その最新動向:COM Express Type 7
組み込み向けモジュールとして標準的に利用されている「COM Express」だが、現在、COM.0 R3.0で「Type7」の策定が進められている。規格に深く関わるADLINKが最新状況を説明した。
業界団体「PICMG(PCI Industrial Computer Manufacturers Group)」が策定した組み込み向けモジュールの標準規格が「COM Express」だ。超音波診断装置やロボットアーム制御、各種測定器などさまざまな領域で使われ、スモールファクターの中では3割近いシェアを得ているという調査結果もある。
COM Express規格の策定に深く関与したADLINKが主催したセミナー「ADLINK COM Expressセミナー〜IoTの普及とともに進化する産業用組み込みシステム〜」では、COM Product Center シニアディレクターのHenk van Bremen氏がCOM Express規格の最新動向について説明した。
COM(Computer On Module)は組み込み機器においては1枚のボードにCPUやメモリ、バス、各種インタフェースなどを搭載した製品の総称として用いられており、COM ExpressはCOMの1規格といえる。COM Expressの他には「Qseven」や「XTX」などの規格が存在する。COM ExpressをはじめとしたCOMは「キャリアボード」と呼ばれる拡張ボードによる機能拡張に対応しており、COMでコンピュータとしての基本機能を構成し、キャリアボードで用途に応じての機能実装を行うという使い方が一般的だ。
COM ExpressはCPUにx86アーキテクチャのCPUを搭載し、ボードサイズとしては125×95mmを最大値とするように定義されている。これらから推測できるようPC(デスクトップPC)のフォームファクタとして一般的なATやATX、ITXなどがサイズ的に利用できない用途に使われることが多い。用意するインタフェース(正確には電気規格)に応じて「Type」が規定されており、現在主流となっている「Type6」ではこれまで搭載していたPCIやIDEを廃し、PCI ExpressやUSB 3.0、HDMIなどデジタルディスプレイなどがサポートされている。
Typeは現在1〜6、10が策定されており、現在COM.0 R3.0にて仕様策定が進められている「Type7」ではバスのLPCにかわってeSPI(Enhanced Serial Peripheral Interface)への対応が行われる予定だ。これはインテルの最新アーキテクチャであるSkylakeがLPCとeSPIの双方をサポートしていることも大きな要因として挙げられる。また、普及の進んでいるギガビットイーサネット(GbE)へ対応も行われる予定だという。
ADLINKとしては当面の間はType6を主力に据える考えで、BraswellやBroadwell/Broadwell ULT、Skylake/Skylake ULTを搭載したCOM Expressボードの投入の計画している(Broadwell ULTを搭載した「cExpress-BL」は既に生産中)。なお、Type2については新規開発を停止し供給とサポートのみへのフェーズへと移行する予定だ。
利用領域が重複するためにCOM ExpressとSMARCのどちらを選ぶべきかという課題について、Bremen氏はそれぞれのアーキテクチャに応じた選択を行うべきだと主張した。COM ExpressはPCのアーキテクチャを利用しているためにペリフェラルの選択肢が多い代わりに電源は12Vを使わざるを得ない。
その一方でSMARCはスマートフォン/タブレットのアーキテクチャを基にしているためCOM Expressに比べればペリフェラルの選択肢は狭いが、必要な電源は3Vからと低い。消費電力についても同様だ。インタフェースにSPIやI2Cが使えるのもSMARCのメリットといえ、加えてBaytrialとの“相性”という観点ではCOM ExpressよりSMARCの方がマッチしており、Mini COM Expressと比較した際の優位点はSMARCの方が多いとをBremen氏は説明した。
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