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「グローバル最適地生産」実現に不可欠な“標準化”と“共通言語”生産管理の世界共通言語「APICS」とは(1)(4/5 ページ)

生産の「グローバル化」が叫ばれてから久しいが、工場進出はできても多くの企業が成果を出すのに苦労している。苦労の要因の1つにコミュニケーションの問題があるが、実は、工場を運営しサプライチェーンを管理する“世界共通言語”が存在する。「APICS」だ。本稿ではAPICSとは何か、またどう活用できるのかということを専門家が解説していく。

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日本におけるAPICS/SCCの状況

 それでは、日本ではどのくらいの人がAPICSの資格を持っているのだろうか。大変残念なことだが、日本でのこれらの資格の活用レベルは世界最低水準だといえる。下の表に示すように、日本のAPICS資格取得者は、CPIM資格、CSCP資格それぞれで世界41位で、この状況は当面変わりそうにない。

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CPIMとCSCPの国別取得状況 出展:日本生産性本部
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2014年の国別資格取得者数(クリックで拡大)出典:日本生産性本部

 日本では、多くの国に遅れてようやく2011年に日本生産本部と日本ビジネスクリエイトがパートナーとなり、国内での教育セミナーや試験が始められたという状況だ。既にグローバル企業では、早期からAPICS資格を採用条件とした動きがある他、韓国のサムスングループなども社内標準としてAPICSの知識体制を採用。また、中国では社内教育(正規のインストラクターによるインハウス/セミナー)を積極的に推進するなど、世界では一気に普及が進んでいる。また、大学でもグローバル人材養成という目標から、大学や政府からの補助をもらって講座を開講している韓国の状況などを見ると、日本の現状は大きく差があるといえる。

海外では既に生産管理スキルの“ものさし”に

 既に、多くの外資系企業で昇進条件の一つにAPICSの資格保有が挙げられているなど、APICSの資格がサプライチェーンに関する業務知識やスキルレベルを測る“ものさし”の一つになっている。グローバル展開する某企業の本社は「世界中の各拠点に、少なくとも1人はAPICSの資格保有者を置くこと」という指示を出し、APICSの試験対策講座に社員を通わせているという。アジアにおいてもSCM関連の求人条件にAPICS資格の有無をたずねる場合が増えてきており、グローバル標準の1つといえる状況になってきている。

 米国での調査では、無資格の場合と比較して、CPIM資格取得者は14%、CSCP資格取得者は21%も高い報酬を得ることができているという調査結果もある。しかし、残念ながら日本ではこのような資格の取得が初得者の待遇に反映されることは少ない。こういった、世界標準からの遅れが、日本企業の世界展開に足かせとなっていることは明らかである。実はSAPやOracleのSCM関連モジュールの標準用語もAPICS用語にのっとっているのだが、日本ではディーラーもユーザーもそのことすら分かっていないのが実情である。

 グローバルにビジネスを展開している企業では、複雑な専門分野に関して、世界各地で話が通じる「世界の共通言語」の必要性を肌で感じ、既に利用している。日本企業においても、世界標準の業務知識フレームと言語の導入が急がれる。

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