携帯電話開発の歴史に見る、「すり合わせ」から「組み合わせ」へのシフト:組み込み機器開発入門(3)(2/2 ページ)
今回はスマートフォンへとシフトした携帯電話を例に、「すり合わせ」から「組み合わせ」と変化した組み込み開発の手法の変化と、今後求められる要件について考えます。
組み合わせ開発は、必要な機能を部品として購入し、組み合わせて、製品として組み上げる開発手法です。
メール機能であればメールアプリケーション、Webページ閲覧機能であればWebブラウザ、これらのアプリケーションを動かすためのプラットフォームとしてオペレーティングシステム、といったように必要なハードウェアのチップ、モジュールから始まり、ソフトウェアのミドルウェア、アプリケーションといったものまでを組み合わせて、組み込み機器を開発します。
この組み合わせ開発により、機能の高度化・多様化、製品販売サイクルの短期化、低価格化を実現しているのです。
「品質重視」偏重の落とし穴
すり合わせ開発では、優れたソフトウェア、ハードウェア技術者が一から技術を積み上げる事で、高い革新性と高い品質を誇る製品を作ることができました。しかし、組み合わせ開発で高い革新性と高い品質の製品を作り上げるためには、高い革新性と高い品質をもつ部品を見つけることが重要となります。
細かい技術の積み上げで作り上げるすり合わせ開発は日本のものづくり気質に非常にマッチしており、このことが日本のエレクトロニクス産業を大きく発展させ、そしてジャパンクオリティという言葉が生まれたのだと私は考えています。しかし、すり合わせ開発が主流となった現在では、より高い革新性とより高い品質をもつ部品を見つけるために、組み込みシステム開発技術者がもっと幅広い視野を持つ必要があるのです。
残念ながら、現在の日本の組み込み製品は海外メーカーに負けているように思えます。私個人の意見ではありますが、国内の組み込み機器は品質ばかりを重視するため、革新性に乏しい保守的、現実的な製品になってしまっているのではないでしょうか。
これからの組み込みシステム開発では、堅実な部品を組み合わせることももちろん重要ですが、革新的な機能を導入し、メーカー独自のカラー、オリジナリティのある組み込み機器を開発していくことも必要ではないでしょうか。
「高い革新性」と「高い品質」を実現するために
高い革新性と高い品質をもつ部品を見つけることは簡単ではありません。組み込み製品の業界では各社がさまざまな取り組みをしていますが、その中の1つとしてEIPC(Embedded IP Community)というコミュニティーがあります。EIPCでは、世界中の優れた部品情報を集めWeb掲載し、日本国内のエレクトロニクス産業の技術者へ、情報提供やメンバー間の情報連携強化のためのコンタクト手段の提供など多様なサービスを提供しています。
そのような各社さまざまな取り組みが、組み込み機器システムの開発/研究に役立ち、高い革新性と高い品質を誇る組み込み機器を次々と実現することで、日本のものづくりとエレクトロニクス産業の復興につながることを期待しています。
次回は、組み込みソフトウェア入門として、実際に組み込み機器のソフトウェア開発を見ていきましょう。 (次回へ続く)
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