なぜIoTなのか、トヨタ生産方式の課題から考える:トヨタ生産方式で考えるIoT活用(1)(2/5 ページ)
日本型モノづくりの象徴ともいうべき「トヨタ生産方式」。日本的な“人の力”に頼った手法に見られがちですが、実はトヨタ生産方式にもIoT(Internet of Things、モノのインターネット)は適用可能です。本連載では多くの製造業が取り入れるトヨタ生産方式の利点を生かしつつ、IoTを活用してモノづくりを強化するポイントについて解説します。
トヨタ生産方式による製造業の課題
自動車部品メーカーには素材加工(金属加工、樹脂成形、ゴム加工など)の工程が多く存在し、そこでは機械作業によるロット生産が中心となるため、歩留まりが悪く不良率も高いという特性があります。
例えばプレスの工程では、加工を開始する前に材料の金属板やコイルを設定し、金型を取り付けます。そこからすぐに連続して打ち始めるのではなく、何個か試し打ちをして正しく金型や材料がセットされているか確認をし、打ち終わりの時点でも何個か試し打ち行います。必要な数だけを作ることが難しく、スクラップも発生します。
現在では車両の左右両方に取り付ける部品の場合、一緒に型抜きをすることが一般的です。この場合片方に不良が発生するともう片方が端数在庫として別管理となります。これも破棄するタイミングの判断が難しい部分です。樹脂成形やゴム加工の場合、成形やゴム加工の始めには材料の無駄が必ず発生します。この量も意外と多く、季節変動によりその量も変化します。
自動車部品の世界では流用設計の比率が高いため、製品設計、工程設計の時点で適正な品質、コストの確保が求められます。そのため素材の質量、不良率、設備の可動率(べきどうりつ)の実力値を見ながら、顧客の要求仕様を満足する素材、部品を選択し安定した工程の流れを作り込むことで品質と適切なコストの確保を実現します。
設備の安定稼働や品質確保を阻む要因
しかしながら現状ではモノづくりを取り巻く環境の変化に伴い、安定した設備稼働や適正な品質の確保が難しくなりつつあります。その要因となる主な項目を下記にまとめます。
部品形状の複雑化と加工技術の高度化
1つ目が車体のコンパクト化や軽量化に伴い、製造する部品の形状が複雑化し、さらに素材質量もより少量になりることで求められる加工技術の難易度が高まっているという点です。さらに部品の一体化による個々の部品の大型化も進んでおり、1部品当たりに多くの保有スペースが必要になりつつあります。
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