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「H-IIAロケット29号機」公開(後編)――“高度化”で大改造された第2段H-IIA Ver 2.0(3/4 ページ)

日本の基幹ロケット「H-IIA」が「高度化」と呼ぶ大型アップデートを実施する。“H-IIA Ver 2.0”として諸外国のロケットと渡り合うため、定められた3つの目標と、6つの着目すべき技術について解説する。

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  • (4)推進剤の液面保持機能の改良

 慣性飛行中は無重力状態になるため、そのままだと液体の燃料や酸化剤はタンクの中で浮遊してしまう。エンジンを動かすためには、液体をタンク底部側に保持(リテンション)する必要があり、RCS(姿勢制御スラスター)を使って、微小な加速を与え続けている。

 飛行が長時間になると、当然、RCSの燃料であるヒドラジンの消費量が増えてしまうが、それを抑えるため、蒸発した水素ガスを活用することにした。液体水素タンクで蒸発した水素ガスは、本来は無駄であるが、これを噴射するノズルを追加して、リテンションに利用。これでヒドラジンのタンクを追加せずに済むようになった。

第2段エンジンの右下に見えるのがリテンション用のノズル(赤枠)
第2段エンジンの右下に見えるのがリテンション用のノズル(赤枠)
黄色カバーの部分がノズルで、ここから水素ガスを噴射。反対側にもう1つある
黄色カバーの部分がノズルで、ここから水素ガスを噴射。反対側にもう1つある
液体水素タンクの上側。恐らく水素ガス用の配管が追加されているはず
液体水素タンクの上側。恐らく水素ガス用の配管が追加されているはず
  • (5)電子機器の改良

 ロケットには太陽電池は搭載されていないので、必要な電力は全てバッテリーで賄う必要がある。飛行時間を延長するとバッテリーが足りなくなってしまうため、高度化の第2段では、バッテリー容量が約2倍に強化されている。また遠地点(高度3万6000km)からの通信を可能とするために、長距離通信用アンテナを開発して搭載した。

開発したアンテナは、緑色カバーの下にあって見えない(写真では左側を向いている)
開発したアンテナは、緑色カバーの下にあって見えない(写真では左側を向いている)
  • (6)第2段エンジンの再々着火技術

 従来は2回目の燃焼後に衛星を分離していたが、高度化ではロングコーストの後、3回目の燃焼を行う。この3回目の燃焼は、衛星をより正確に軌道に投入するため、推力を60%に絞って実施する(スロットリング)。再々着火もスロットリングも、技術実証としてミッション終了後に試したことはあったが、本番として行うのは29号機が初めてだ。

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