「H-IIAロケット29号機」公開(前編)――29号機で何が変わったのか:見せてもらおうか、「H-IIA改」の性能とやらを(1/4 ページ)
日本のロケット「H-IIA」が「高度化」と呼ぶ大型アップデートによって、「アリアン5」や「プロトン」など諸外国のロケットに戦いを挑む。アップデート初号機となる29号の機体公開から、国産ロケットの現状を読み解く。
日本の基幹ロケットである「H-IIA」ロケットが大きくアップグレードされる。H-IIAの初打ち上げは2001年8月。これまでに28機が打ち上げられ、そのうち失敗は1機のみと、世界的にもトップクラスの高い信頼性を実現しているが、初飛行から既に14年が経過しており、課題も見えてきた。
「課題」とは何か。それは、H-IIAロケットに搭載された衛星を見れば良く分かる。これまでに打ち上げられたのは、地球観測衛星、技術実証衛星、情報収集衛星、月惑星探査機など、主衛星の顧客は全て「国」だった。特に情報収集衛星には10機が使われており、H-IIAにとっては最大の「お得意さん」となっている。
官需依存からの脱却――これは、衛星打ち上げサービスを提供している三菱重工業にとっては、避けて通れない課題である。官需は大幅な増加が期待できない上、年によって変動が大きい。安定して事業を継続するためには、海外の商業衛星の打ち上げを取り込んで官需の変動を補う必要がある。
だが、これまでのH-IIAはコスト面や性能面で競争力が弱く、商業衛星の打ち上げ市場に食い込めていなかった。コスト面については、次期基幹ロケットの「H3」で抜本的に改革される予定であるが、初飛行は2020年度とまだ先だ。それまでは現行のH-IIAで戦うしか無く、大幅なコストダウンが難しい以上、性能を強化するしかない。
そこで宇宙航空研究開発機構(JAXA)が実施したのが「基幹ロケットの高度化」プロジェクトだ。この「高度化」には、さまざまな改良が含まれているのだが、初めて適用されたのが、次に打ち上げられるH-IIAロケット29号機。本稿では前後編にて「高度化」について紹介するが、まず前編では、2015年8月28日に行われた29号機の報道公開の模様を中心にお伝えする。
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