鉛バッテリーはリチウムイオン電池より電動車両に向く?:電気自動車(3/4 ページ)
自動車の電源として単電池で使われている鉛バッテリー。しかしバッテリーフォークリフトのような電動車両では、複数の鉛バッテリーを用いた組電池システムとして利用されている。パナソニックが、コマツのバッテリーフォークリフト用に新開発した「EV鉛蓄電池 組電池システム」は、電動車両への適用をさらに拡大し得る製品だ。
鉛バッテリーを組電池システムに仕立てる制御アルゴリズム
コマツのFE25-1に採用されたEV鉛蓄電池 組電池システムは、新開発の鉛バッテリーを6直列×6並列で組み合わせたものである。電池容量は72V360Ah(26kWh)で重量は774kgとなっている。
EV鉛蓄電池 組電池システムの開発では、新開発の鉛バッテリーだけでなく、組電池システムにもさまざまな工夫が凝らされた。組電池システムにおける開発要素は、従来必要だった電源コントローラの廃止と、電源コントローラの廃止を代替する充電制御アルゴリズムの導入になる。
鉛バッテリーの組電池システムの場合、冷却しやすい外側と冷却しにくい内部で充電時に発生する温度にばらつきが出てしまう。この温度ばらつきをそのままにすると、充電状態にもばらつきが出てしまうので、充電状態を均一にする電源コントローラが必要だった。
この電源コントローラを含めた充電の制御システムは高コストだ。EV鉛蓄電池 組電池システムでは、組電池システムの温度を均一にし、冷却を促進しやすい構造を解析技術で導き出すとともに、新たな充電制御アルゴリズムを導入した。従来は、毎サイクル満充電にしていたが、電池の状態に合わせて充電量を制御し、数サイクルに1回満充電にする「新リフレッシュ充電」を行うようにした。
これらの工夫によって、組電池システムの温度ばらつきは従来比で3分の1に低減された。電池寿命も、従来の4年相当(充電サイクル1000回)から、5年相当(充電サイクル1500回)に向上することができた。高コストの電源コントローラも省略できたので、組電池システムコストも20%削減できたという。
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