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ソーラーカーの車体重量は成人男性1人分、成形厚0.06mmの炭素繊維織物で実現材料技術(1/2 ページ)

工学院大学がソーラーカーレース「WSC 2015」に参戦するため開発した車両「OWL」は、車体重量が55kgと成人男性1人分よりも軽い。これは、成形厚0.06mmという新開発の炭素繊維織物を用いた炭素繊維強化樹脂で製造しているからだ。

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 工学院大学が2015年7月に発表した、新開発のソーラーカー「OWL(アウル)」。世界最大規模のソーラーカーレース「World Solar Challenge(WSC) 2015」(開催期間:2015年10月18〜25日)に参戦するための車両である(関連記事:「惨敗から学び栄光つかむ」、工学院大が世界最大のソーラーカーレースに再挑戦)。

 前回の「WSC 2013」挑戦の際に得た経験を反映するとともに、2人乗り以上が対象となる「クルーザークラス」への参戦クラス変更などとも合わせて開発が進められた。


工学院大学の「WSC 2015」の参戦車両「OWL」(クリックで拡大)

 ソーラーカーは、その名の通り、車両に搭載する太陽光発電パネルで発電した電力によって走行する車両のことだ。太陽光発電パネルの発電効率に幾分かの違いがあったとしても、1週間にわたるソーラーカーレースの期間中に得られる電力の総量はそれほど大きな差にはならない。やはり、その電力を使って、車両がどれだけ効率的に走行できるかが成績の差につながってくる。

 そのためには空気抵抗の少ない車両形状の設計が必要になる。OWLも、「WSC 2013」の参戦車両と比べて空気抵抗係数(Cd・A値)を56.7%も低減している。

 しかし、ソーラーカーの走行効率は車両形状だけによるものではない。モーターや電池といった電動システムの効率もさることながら、車体が軽い方が有利に働く。

 自動車の軽量化で一般的に用いられる手段の1つが、金属素材の樹脂化である。特に、車体の剛性を金属素材並みに維持しつつ樹脂化する場合には、炭素繊維強化樹脂が用いられることが多い。炭素繊維強化樹脂の密度は、鉄の4分の1〜5分の1、アルミニウムの3分の2〜2分の1と軽量でありながら、十分な剛性を有しているからだ。

 工学院大学はWSC 2013の参戦車両でも車体に炭素繊維強化樹脂を採用していたが、今回はパートナー企業の新技術を取り入れてさらなる軽量化を図った。車体重量は55kgで、成人男性1人分よりも軽い。

「OWL」の車体には新開発の炭素繊維を採用している
「OWL」の車体には新開発の炭素繊維を採用している。重量は55kgだ(クリックで拡大) 出典:工学院大学

 まず、樹脂を含浸する前の炭素繊維織物については、帝人の子会社である東邦テナックスが新開発した極薄織物用炭素繊維原糸を使い、サカイオーベックスの開織加工・製織加工技術で厚さ0.06mmまで薄肉化したものを使用した。これまで最も薄いとされていた炭素繊維織物と比べて、単位面積当たりの重量が120g/m2から約半分の60g/m2まで削減されている。

炭素繊維織物の比較
炭素繊維織物の比較。手前にあるのが厚さ0.06mmまで薄肉化したもので、薄いため紙のように垂れ下がっている。奥にある従来品は、一定の厚みがあって樹脂板のように自重を支えられるのであまり曲がらない(クリックで拡大)

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