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原価低減に欠かせない科学的アプローチを学ぶ【中編】:実践! IE;磐石モノづくりの革新的原価低減手法(8)(4/5 ページ)
革新的な原価低減を推進していくための考え方や手法について解説する「磐石モノづくりの革新的原価低減手法」ですが、前回から3回にわたり「原価低減推進のために必要な科学的アプローチの手法」についてお伝えしています。中編となる今回は「ワークサンプリング法(WS法)」について解説します。
観測の準備
(1)対象職場の責任者および作業者への説明をすること
観測対象となる作業職場の責任者と作業者へ観測の趣旨を納得のいくまでよく説明します。できるだけ観測を意識することなく、平常通りに、そのままの状況で仕事を続けるように依頼します。よく、コッソリと隠れるようにしてサンプリングする例を見かけますが、これは決して褒められた行為ではありません。
(2)観測用紙、集計用紙を作成する
目的に応じた観測用紙、集計用紙を設計・作成します。「図1 ワークサンプリング観測用紙」は、機械職場における作業内容を観測する際に用いる観測用紙の一例ですので、参考にしてください。
観測を始める
- 予定の観測時刻がきたら、用紙を持って所定の経路に従って巡回します。巡回経路は、2、3通りの経路を決めておき、いつも同じ経路を通らないようにするのが一般的なやり方です
- ワークサンプリング法は瞬間調査と呼ばれるように瞬間的観察が絶対条件です。作業者または機械から2〜3mの位置にきたとき、ちらっと見て、その瞬間の作業をあらかじめ定義した要素作業のどれに相当するかを判断して、観測用紙の項目へ記録しなければなりません。4〜5m先から作業者の動作や機械稼働状況を見ながら近づくと、要素作業は刻々と変わっていくので、どの要素作業を記録すればよいのか迷うことになり、正しい状況の把握が困難になるので注意が必要です。観測に慣れれば、普通の歩速(1分間70〜80m)で止まらずに観測することが可能になります
- 作業者が定位置にいない場合は2つの場合があります。ある範囲内を歩き回って作業する場合は、少し目で探せば大体分かるものです。会議やその他で不在の場合は、単に“不在”とするか、次に巡回したとき、その作業者がいれば行き先を聞くか、あるいは近くの作業者に聞くか、打ち合わせておく必要があります。また、行先表示板を設けて行き先を記載しておいてもらう方法もあります。要は、単なる“不在”では後で対策が困難になるので、理由の分かる方法を決めておかなければなりません
- 部外のスタッフが調査する場合は、はじめのうちは作業者の顔を知らないので困る場合もあります。この時は顔を覚えるまで帽子や腕に目印(名前や番号)を付ける方法が採られます
- 予備観測など、初めて調査する場合は、いくら空気作りをしても作業が意識的になる場合が多く、そのような時のデータは本調査に入れない方がよいでしょう
- 要素作業または余裕の細目については、予備調査をして定義や範囲(切削とは、切粉の出ている間とか、刃物を進めてから戻すまでとか)は、機械別、作業別に具体的に前もって決めておかなければなりません。また、最初に粗く作業分割してしまうと、後で細かく検討することが不可能になるので、最初はなるべく細かく作業分割しておくほうが良いでしょう
- ワークサンプリング法は、作業そのものを調べるのが建前ですから、作業目的が分からないことがあります。例えば、“歩行”などは工具室への歩行か材料運びの歩行か、あるいはちょっとした連絡の歩行かは分からない場合が多いものです。そのことについて、いちいち作業者に聞くことができないとすれば、それはワークサンプリングの限度を示しているといえます
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