アウディもBMWもダイムラーも欲しがる高精度地図データの雄、HEREの現在地:自動運転技術 HERE インタビュー(3/4 ページ)
HEREは、高精度な3次元地図データをはじめ、自動運転車を実用化する上で重要な技術を持つ企業だ。配車サービスのUberや、アウディ、BMW、ダイムラーの3社連合が買収に名乗りを上げるなど注目を集めているが、そのHEREの現在の事業展開はどのようなものなのか。同社のアジア太平洋地域担当本部長を務めるマンダリ・カレシー氏に話を聞いた。
自動運転技術に必須の高精度地図データを用意
地図データとナビゲーションコアを核に車載情報機器のプラットフォーム化を目指すSmart Guidanceに対して、Intelligent Carは、車載情報機器にとどまらない自動運転技術を対象にした事業となっている。
Intelligent Carの柱は、同社の主力事業である地図データを、自動運転技術に合わせて進化させて高精度地図データ「HD Map」である。従来の地図データは、「点」となる地点情報の間を通行可能な「線」で結ぶリンクベースが基本になっている。一方HD Mapは、3次元のスプライン曲線で構成されるサーフェスモデルになっている。つまり、「2次元の線表現から、3次元の面を表現できるようになった」(カレシー氏)わけだ。
earthmineを買収したのは、HD Mapを作成するための3D地図データ作成技術が狙い。HEREによる買収によって追加投資が可能になったearthmineは、200台以上の車両を使って世界全域でHD Mapを鋭意作成中である。
このHD Mapは単に3次元や高精度であるだけでなく、自動車の運転に必要なさまざまな情報も追加されることになる。例えば、高速道路の詳細な車線情報や分離帯の位置、ガードレールや側壁の高さ、設置されている標識の位置と内容などだ。
新しい道路が作られた際に地図データをほぼリアルタイムでアップデートできる仕組みも組み込む。HD Mapは複数のタイルで構成されており、新しい道路ができるなど地図データに変更が生じた場合、変更があった場所のタイルを新たなものに入れ替えることで対応する。
そしてHD Mapは、車載情報機器側に搭載された無線通信機能とクラウドを活用することで、最新の情報が反映された状態で利用できるようになる。このクラウドベースのHD Map「HD Live Map」を車両側で利用するためのクライアントソフトウェア「HD Live Map Client」は2015年末ごろにリリースされる予定である。
カレシー氏は、「HD Live Mapが自動運転技術に最適なのは、地図データが高精度でほぼリアルタイムで更新されるからという理由だけではない」と説明する。地図データと併せて、道路を走行中のさまざまな車両から得られるセンサーデータを解析した結果を反映できることも特徴の1つになっているのだ。
HEREは2015年6月、走行中の各車両に搭載されているさまざまなセンサーから得られる情報を、同社のクラウド「Location Cloud」に送信するための標準インタフェースを発表した。この標準インタフェースは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスによるオープンな仕様になっている。現在、車載センサーの情報は、各自動車メーカーによって仕様が異なっているため、クラウドに集積してもそれを統合して解析することは容易ではない。オープンな標準インタフェースを提案することで、Location Cloudにセンサー情報をまとめられれば、センサー情報の解析結果をHD Live Mapと併せて提供できるようになる。
各車両のセンサーから得られる情報は、標準インタフェースを介して「Location Cloud」に集積される。クラウド上での解析結果は、「HD Live Map」と併せて提供される(クリックで拡大) 出典:HERE
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