RP、AM、そしてDDMへ。モノからサービス関連へ。モノづくり技術の進化と深化:プロダクトデザイナーが見たDMS2015(1/3 ページ)
プロダクトデザイナーの林田浩一氏から見た「設計・製造ソリューション展(DMS)」とは? 3Dプリントや3Dスキャンエリアの展示エリアを中心に、今回の展示の傾向や業界の動向について紹介する。
2015年も「設計・製造ソリューション展(DMS)」が開催された。主催者の資料によると同時開催の「機械要素展」「3D&バーチャルリアリティ展」「医療機器 開発・製造展」を合わせると世界最大級のモノづくり専門展となるそうだ。今回の「第26回 設計・製造ソリューション展(DMS2015)」(2015年6月24〜26日の3日間、東京ビッグサイト)も3Dプリントや3Dスキャンの展示エリアを中心に会場を眺めてきた。
ここ数年はDMSを連続して訪れているせいか、少しずつ会場での変化を感じる。個人的な思いとしてはなかなか歩みが遅いとも感じているけれど、3Dプリンタを試作だけでなく製造現場でのツールや最終製品に、という動きは確実に進んできている。始まりの「RP(Rapid Prototyping)」、近年の「AM(Additive Manufacturing)」という表現に加えて2015年は「DDM(Direct Digital Manufacturing)」という表現が出てきた。
モノからサービス関連へ
変化の1つは、モノからサービスへと主役が移ってきたことだろう。全体的に2014年くらいまでは、各社ともに「こんなことができる3Dプリンタです」という感じの、機器が主役の見せ方をしているところが多い印象だった。
もちろんブースでのプレゼンテーションタイムでは、導入事例の紹介などもされていたものの、「こんなものが造形できるウチのマシンってスゴイでしょ?」という性能訴求がプレゼンテーションの主題だった印象だ。3Dプリンタがブームのような状況を呈した頃に初めて目にする人を驚かすための、「組み合わさった歯車」のサンプル(組み合わさったセットのまま造形して、それがちゃんとクルクル回るタイプのもの)展示が多く見られた頃の延長線のものだ。
それが今回は具体的な開発や製造現場での活用事例、そこで使われたものを展示するというスタイルが増えていた。そして主役が機器からサービスに主役が変わってくると、当たり前ではあるけれど人の対応も変わってくるから面白い。
筆者はブースで説明員の方に話を聞く際に、自分がプロダクトデザインの仕事をしていることを告げて説明を聞くようにしている。前回までは、説明員の方からのファーストアプローチは「3Dプリンタというものについて教えてあげましょう」「これを使うと早く試作できて、試作段階で検討できることが増えるんですよ。スゴイでしょ?」というようなものが多く、こちらが知りたいことを質問させてもらえるまでワンクッション、ツークッションある感じのブースも珍しくなかった。それが今回は「3Dデータをどういう用途で扱っているか?」「3Dプリンタを使っているか?」というアプローチで話しかけられることが多かったように感じる。そういったブースでは「お客さまのデータで造形するので試してみませんか」という提案をもらうことも多かった。
スリーディー・システムズ・ジャパン(以下、スリーディー・システムズ)のブースで展示されていた「3DMe PhotoBooth」は、3Dプリンタを使ったビジネスのためのツールを提供するというアプローチなだが、これなども、機器単体の性能競争の時期を過ぎて、サービスを含めた3Dプリンタ市場を創っていく動きと見える。
ビジネスがサービス寄りな雰囲気を感じたのは、3Dスキャナ関連の方が多いかもしれない。ざっくりとした印象の話で申し訳ないが、「3Dスキャンサービスやります」というブースがいつの間にか随分と増えているように感じた。数年前のDMSだと、3Dスキャナの展示エリアではスキャンサービスを売りにしているブースはまだまだ少ないなぁと感じた記憶がある。そういえばその頃は、出力サービスをビジネスとしているサービスビューローのブースでも「3Dデータを持ってきたら作ってやるよ」という所も見られたが、今やそういうスタンスの所は目にしなくなっている。
ちょっと気になったので、ググってみると矢野経済研究所による「3Dスキャナ市場に関する調査結果 2013」というプレスリリースに当たった。これによると「2012年度の国内3Dスキャナ市場は、数量が1280台(前年度比136.2%)、金額が76億8000万円(同125.3%、事業者売上高ベース)」であり「2016年度の国内3Dスキャナ市場は、数量が2300台、金額が110億円(事業者売上高ベース)へ成長すると予測する」とある。市場としてのポテンシャルはあるけれど、まだまだ小さくていわゆるキャズムを超えるには至っていない状況といえるようだ。
3Dプリンタの普及に連動して、3Dスキャナの方もハイエンドからローエンドのものまで機器の充実が進んできているので、スキャンから出力までのビジネスもいろいろと展開が進むのはこれからが本番なのだろう。
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