第38回 IBISの新しい傾向:前田真一の最新実装技術あれこれ塾(1/5 ページ)
実装分野の最新技術を分かりやすく紹介する前田真一氏の連載「最新実装技術あれこれ塾」。第38回は業界標準「IBIS Model」を制定する業界団体「IBIS」の新しい傾向について解説する。
本連載は「エレクトロニクス実装技術」2014年5月号の記事を転載しています。
1.IBIS Summit
「DesignCon」は、毎年、アメリカ カリフォルニア州のサンタクララで開催されるもので、その最終日には「IBIS Summit」が開催されます。IBIS Summitとは、伝送線路解析に使うドライバやレシーバなどのモデルで業界標準となっている「IBIS Model」(I/O Buffer Information Specification)を制定する業界団体「IBIS Open Forum」(図1)が主催する会議です。
IBIS Summitはオープン制で、事前登録(当日登録でも可)さえ行えば、誰でも参加できます。IBIS Summitは現在、アメリカで年1回(DesignCon)、ヨーロッパで年1回、アジア地区(日本、中国、台湾)でも開催されています。
以前は、アメリカだけで年に3〜4回程度開催されていました。その後、日本でも開催されるようになってからは、アメリカでの開催回数が減っていきました。その理由は、特にアメリカでは当初、IBIS Modelの啓蒙、普及のため多くの機会を捉えてオープン参加のSummitを開催するようにしていたものが、最近ではSummitは新しい規格の議論の場に変わってきたためです。
日本をはじめとするアジアでは、IBIS SummitはIBIS Modelの機能や使い方の紹介、精度や機能の検証報告が多いのですが、アメリカのSummitでは現状モデルの問題点、新機能の提案などが主な話題となっています。
そこで今回では、2014年のIBIS Summitの内容とそこから見えてきた今後のモデルの方向性について紹介します。
表1に、DesignCon 2014でのIBIS Summitのプログラムを紹介します。
日本でのIBIS Summitは午後だけですが、アメリカではたっぷり1日のスケジュールを組んでいます。筆者は航空機のスケジュールの都合で3時半に退席しましたが、実際には4時半頃までで終了したそうです。参加者は、のべで約60人ですが、遅れて参加したり、中座もあり、常時では30人程度の参加でした。オープン参加とはいえ、約8割は、IBIS Open Forumのメンバー企業の人間で、規格を決めたり決定したりする権限を持っていて、会議の常連メンバーが占めています。
日本やアジアで開催されるIBIS Summitの発表の内容は、IBISモデルの機能紹介や運用事例といったものが主になっています。それは、会の性格が、どちらかというとIBISモデルの啓蒙を主としたものになっているからです。
しかし、アメリカのIBIS Summitの場合は、これから説明する規格の制定に関連しますが、メンバーが直接顔を合わせて議論する場という感じがします。アメリカでは国が広く、普段はお互いに顔を合わせる機会が少ないので、Summitがお互いが顔を合わせる場になっているのです。
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