“あのミニ四駆”を作ったのは、多摩地域のモノづくり軍団だった!:1つの出会いから新たなモノづくりが始まる(3/3 ページ)
タミヤの「ミニ四駆」とパーソナルファブリケーション技術を融合させたカスタマイズレース「Fabミニ四駆カップ 2015 Spring」の会場で、ひときわ異彩を放っていた「THE HAND」。走りながら指をカタカタと動かすマシンを作ったのは、多摩地域を拠点に活動するモノづくり軍団(ウォリアーズ)、ネクスメディアとギフトテンインダストリの混成チームだった。
「THE HAND」は名刺代わり! 伝えづらい技術やサービスを具現化
企画から3Dプリント出力まで、期間にして1カ月弱。こうしてTHE HANDは完成した――。
大会まで一度も試走をせずに本番に臨んだTHE HANDは、果たして記録を残すことができたのか? 気になる方はリポート記事「Fabカスタム『ミニ四駆』でコースを駆け、そして華々しく散る!?」をご覧いただきたい(本稿では、大会の詳細については割愛する)。
1カ月弱の短期間の開発ではあったが、THE HANDの取り組みの中で、両社の強みを存分に発揮できた点があるという。ボディ側の3Dデータ作成を行った小堀氏は「3Dスキャンして取り込んだ手の有機的な形状に、3次元CADで作り込んだ機構的な要素を組み込むことができた点は、日ごろ3Dサービスを展開する自分たちの強みが存分に生かせたポイントだと思う」と語る。
一方、指を動かす機構的な要素と、フレームパーツ&シャーシの前輪部分のジョイントパーツを設計した佐藤氏は「可能な限り少ないパーツ数でシンプルな構造にし、指の角度などを後からでも調整できるよう設計を工夫した。限られた期間の中で、イメージ通りに進めることができた」という。
今回、彼らがFabミニ四駆カップへ出場した背景には、通常業務だけでは得られない刺激、出場者同士のコミュニケーションから、新たなモノづくりの発想を創出するためのヒントを得ようという狙いがある。そして、自分たちが保有する技術力を外へアピールする場として出場した側面もある。有山氏は「今回のTHE HANDは、3Dモデリング、3Dプリント、3Dスキャンという自分たちのサービスをうまい形で凝縮することができた事例だと思う。THE HANDを一目見れば私たちの技術レベルが分かる。言葉だけでは説明しづらいサービスを具現化することができた、いわば名刺代わりのような存在といえるかもしれない。そういう意味でもFabミニ四駆カップに出場した意義があった」と述べる。
多摩地域の活性化に向けて
Fabミニ四駆カップの活動を通じ、ネクスメディアとギフトテンインダストリはより交流を深め、現在、新たなプロダクト開発をスタートさせている。詳細はまだ非公開ということだが、関係をより強化して両社での“共創”を進めていくという。
その一方で、ネクスメディアはオフィスビルをリノベーションし、2015年7月中に「monofarm Lab」というコミュニティースペースをオープンする。
monofarm Labの立ち上げ責任者で、monofarmウェブマガジンの編集長を務める大木祐二氏は「ニシカワグループの一員として、ネクスメディアは新しい事業を模索していかなければならない。そういった中で、外部とのつながりは非常に大切だと考えている。人と人が連携して何かを生み出せる場、そうした人たちが企画を実現できる場を私たち自らが作り、それを一般開放することで、monofarm Labが多摩地域に広がるモノづくりコミュニティーの中心地として発展し、多摩地域の活性化に貢献できればと考えている」と語る。
まだ調整中とのことだが、monofarm Labでは、ネクスメディアが所有するハイエンド3Dプリンタや3Dスキャナに加え、レーザーカッターなども新設し、本格的なモノづくりがスタートできる環境を整える計画だという。「社内の資産(プロ向けの工作機械)をBtoBのつながりだけで活用するのではなく、地域の方々へ開放することで、どんな新しいモノづくりがスタートするのか大変興味がある」(大木氏)。
東京都東大和市で多摩地域のモノづくり活動を支援するネクスメディア、そして同じく国分寺市で大量生産では作り出せない温かみのあるプロダクト開発を目指すギフトテンインダストリの存在を、Fabミニ四駆カップという大会で知ったように、人と人、企業と企業のつながりは、案外ささいな出会いから生まれるものなのかもしれない。多摩地域でスタートアップを目指している方や、モノづくりに興味のある方は、同年7月中にオープン予定のmonofarm Labに足を運んでみるとよいだろう。もしかすると一生を左右する出会いがあるかもしれない。
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