「エクストレイル ハイブリッド」は胸アツエピソード満載の人情カーだった!:今井優杏のエコカー☆進化論(19)(3/4 ページ)
「エクストレイル ハイブリッド」は、今後の日産自動車の製品展開にも期待を抱かせる、FF車向けハイブリッドシステムを搭載している。しかし筆者の今井優杏氏によれば、そのこと以上に「胸アツエピソード満載の人情カーだった!」とか。
ハイブリッドに意固地な日産を動かした、顧客の言葉
さて、随分寄り道をしてしまいましたが、時勢からハイブリッドに対していつまでも及び腰でいることを許されなくなった日産。
しかし、そこでも日産はサラっと今のハイブリッド車ブームに乗っかることを良しとしませんでした。まあ、セレナのマイクロハイブリッドは時代に呼応せざるを得ない形で出てきたのは納得するとして、まるで世のエコエコしたハイブリッド車に挑戦状をたたき付けるかのようなV型6気筒エンジンのシーマ、フーガ、スカイラインのFRハイブリッド車3兄弟ですよ。なんというか、これってもう燃費のためって言うんじゃないヤツなの丸バレでしょう。
でもハイブリッド車でないとそもそもショッピングリストから外れてしまう、というハイブリッド信仰がまかり通る日本において、それでもセダンにはハイブリッドという選択肢があっただけマシともいえる状況だったんじゃないでしょうか。
そこでやっと話は冒頭に戻って、“待望の”ハイブリッドの登場と、いよいよなったわけです。
そんな意固地な日産を動かしたのは、実は顧客だったそうな。
なんと、「エクストレイルを買いたいけれど、ハイブリッドがないからやめる」という人がとても多かったのですって。消費者の眼はシビアですね。
ですから、庶民にとってかなり魅力的な価格で(一番安いグレードで280万4760円!)、しかも容姿端麗な都会派SUVで、排気量2.0lで直列4気筒という普段使いにも対応するイマドキな小エンジン=お財布に優しい! というエクストレイル ハイブリッドには大きな期待が掛かるかと思います。
マーケットの声に呼応して生まれたモデルですし、ただでさえ販売が好調だったエクストレイルです(重要なマーケットである中国での販売台数は、2014年で114万5000台と同社2番手のポジション)。コレ、今や“出せば売れる”といわれるコンパクトSUVですから。
実際に試乗をしてきましたが、エクストレイルのラインアップの中でダントツにドライブフィールがいい! 正直、ガソリンエンジンモデルの試乗会の時は「う〜ん、悪くないけどよくもないな」みたいな曖昧な印象だったんですよ。
歴代、キャラクターの強いクルマでしたから、北米市場だけを見据えたようなガソリンエンジンのエクストレイル(をしれっと出してきた日産)に、ちょっと反発するような気持ちもありました。
しかし、ハイブリッド車になったらその退屈な印象がコロっといい方向に。
加速時の滑らかなトルクはもちろんのこと、カチっと決まるコーナリングや高速巡航時の安定感、またストレスを感じる振動のなさなど、上質な乗り心地が際立ちます。
「めちゃくちゃ個性的! 面白い!」というわけではないですけど、本当にストレスがない。
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