組み込み機器とは何か、PCとの対比で考える:組み込み機器開発入門(1)(2/2 ページ)
この連載では、これから組み込み機器開発に携わる方を対象に、入門編として知っておくべき内容を紹介します。まずは「組み込み機器とは何か」について、考えてみましょう。
組み込み機器とPCの違い
では、組み込み機器とPCの違いについて考えてみましょう。
組み込み機器の代表例として、温度を測る用途に特化した製品である「デジタル温度計」を例にして考えてみましょう。温度計は温度を測定する事に特化していますので、入力装置としては温度センサ、出力装置としては温度計測完了を知らせる簡単な発音装置と測定結果として数字4桁を表示するだけの簡単な表示装置があれば十分です。制御する機器も少なく、センサからの入力を数字として表示するだけですので、プログラムも非常にシンプルなものとなります。
PCであれば、入力装置としてキーボードにマウス、ペンタブレット、写真を扱うためのSDカードリーダーやスキャナーがあり、出力装置としてはスピーカーや高精細に表示を行えるディスプレイを備えています。さらにはこうした装置を制御するため、直感的で分かりやすい操作が可能なオペレーティングシステムなどのプログラムも備えています。こうした入力装置と出力装置、プログラムを備えているからこそ、オフィス文章から年賀状の作成、画像や映像の編集までも幅広く行えるのです。
ここでは分かりやすいように入力装置と出力装置を例に挙げましたが、演算装置、記憶装置も同様に、組み込み機器の方がシンプルに構成されます。組み込み機器は“目的を果たすための必要最小限の装置、機能で構成される“機器なのです。
それに対して、PCなどの汎用システム/汎用機器の場合は様々な用途へ対応するため、様々な用途を想定した高性能なハードウェア/ソフトウェア(プログラム)を搭載する場合が多いのです。PCの利用用途は利用者、利用シーンによって多岐に及びますので当然のことと言えますが。
機能と価格
PCのような汎用システム/汎用機器は、多種多彩な用途に対応する機能を搭載するため、組み込み機器に比べて、製品単価が高くなる傾向にあります。
機器の性能を決定する重要な役割を果たす演算装置であるCPUだけを見ても、PCに搭載するものは2〜3万円のものが多く使われています。これを温度計に搭載した場合、温度計測を行う機能だけの機器が2万円以上の製品となってしまい、商品価値が失われます。
実際に温度計に搭載されるCPU(マイコン)のほとんどは100円以下であり、温度計測に必要な装置のみで構成されているからこそ、1個1000円などといった価格帯で提供できるのです。組み込み機器は用途を限定することで、低価格化も実現しているのです。
組み込み機器開発について
組み込み機器という言葉すら知らなかった人も多いと思いますが、実は、皆様は用途に応じて、組み込み機器とPCなど専用機をしっかり使い分けて生活しているのです。
組み込み機器はテレビや電子レンジ、デジタルカメラなど日常生活にあふれており、皆さんが生活する上でも必要不可欠なものであると言ってもよいと思います。エンジニアを目指す皆さんにとって、組み込み機器を開発することは、やりがいのあるチャレンジになると思います。
次回からは、本題である組み込み機器開発について説明をしていきます。 (次回へ続く)
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